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人間力を育む切磋琢磨の5泊6日でインターン生は何を見た?【アドベンチャーキャンプ2022 in あま】

先日、小学5年生~中学2年生を対象にした5泊6日のアドベンチャーキャンプが海士町内で行われました。今回は、実際に参加した島留学生/体験生の生の声と共に、海士町教育委員会が行う通称“アドキャン”とは一体どんなものなのかをお伝えしたいと思います。

1. アドベンチャーキャンプとは

海士町の東地区、倉田海岸で行われる5泊6日のキャンプ。
コロナや台風の為中止もありましたが、30年前の1992年から始まり、今回で第24回となる海士町教育委員会の夏の風物詩です。
様々な生活体験(炊事、テント・トイレ設営、いかだづくり、キャンプファイアー等)を通して、困難を乗り越えようとする態度、仲間と支え合う連帯力、自然との共生力、そして、郷土を愛する心を養うことを目的とした行事です。

しかし、このような説明文だけでは、魅力を伝えきることが出来ない!

それが、アドベンチャーキャンプだと思うのです。
ということで、今回はアドキャンに「カウンセラー」という立場で参加した島留学生/体験生との話を交えながら深堀していきたいと思います。

2. カウンセラーとは

アドキャンは数多くの人が関わりながら作りあげられているのですが、その中でも子どもたちと1番近いところで6日間を過ごしたのが「カウンセラー」という方々です。今年は、各班に2名ずつカウンセラーがつき、朝から晩まで子どもたちと喜怒哀楽を共にしました。

今回は島留学生/体験生から6名、島前高校から2名が参加

自分自身も過酷な環境下で、子どもたちの安全面を守るだけでなく、慣れない環境での心の変化に1番近くで寄り添っていました。

そんなカウンセラーの方々の視点からアドベンチャーキャンプを深堀していきましょう

左から、山田若奈さん、金城茜さん、外村美琴さん、佐藤悠さん、田部美空さん

ー アドキャンを終えて、率直な感想を一言づつ聞かせてください

田部: 「あ~終わったな」と「もう終わったな」って感じですね笑

全員: あ~、なんか分かる

佐藤: ん~、でも、俺はなんもない、なんもでてこない。変化を感じないかも。

全員: え~!それは、すごい!笑

外村: 私はもう参加してよかったな~って率直に思うし、海士町の思い出の中でも1位2位になるくらい記憶に残る出来事になりました。

金城: 私はこう、色々悩んだし、色々考えたし、...
でもそれ以上に楽しめた6日間だったなあと思います。

山田: 私は一言で言うと面白かったなあって...。「楽しかった」よりも「面白かった」って感じの方が近い気がします。

― ありがとうございます。実際みなさんの話を聞いていると、やっぱりマイナスの感情よりプラスの感情が多いですね!

― かといっても、実際 6日間過酷なことも沢山あったかと思います。(全員渋い顔をする)みなさんのその顔が物語っているのですが...(笑)、これが1番きつかった!難しかった!大変だった!というものはなんですか?

外村: 難しかったなと思うのは、班でずっと帰りたいと言っている子がいて...。その子を楽しませることは難しくても、どうやったら強制的じゃなくて一緒に頑張ろうって前向きな気持ちに向けられのかをたくさん悩みました。
良い言葉がけができてたかは分からないけど、カウンセラー同士でたくさん考えて、だんだん帰りたいって言わなくなってきて、結局 最終日までいてくれて本当によかったです!

金城: 私が一番難しいと思ったのは、子どもからの反応がなかった時かな。

全員: ああ~分かる

金城: 「どうする?」とか「なにしよっか?」って問いかけをしたときに、「なんでもいい」とか反応がなかった瞬間にどうしたらいいか分からなくなるし、何も返ってこないと 普通に心痛くなるし...。

ー みなさんよくうなずかれてますが、結構そんな瞬間はありました?

全員: めちゃめちゃあります。めちゃめちゃありました。

ーどうやって乗り越えたんですか?

金城: 私はもう粘り強く、呆れられるくらい子どもたちに喋りかけた笑

佐藤: 俺が子どもだったらいやだな~笑笑

金城: でも、子どもたちもきっと嫌だろうな~と思ったりもしたけど、聞き続けました笑

全員: いや、それめちゃくちゃすごい!

ー「なんでもいい」を「○○をしたい」に変えるのってすごく大事なことですよね!

ー そして、今皆さんの話を聞いて思ったのが、きつかったエピソードとして1番にあげられるのが、アドキャンのあの過酷な環境的なことではなくて、子どもたちとの向き合い方なんだなぁと...

金城: 環境は全然苦ではなかったな。逆に「ある」って感じる。
トイレも”ある”し、シャワーも”ある”し、ご飯もあるし、割とあった。笑

穴を掘って作ったトイレ
ドラム缶で沸かしたお湯を浴びる様子

ー あの環境に「ある」って感じるんですね 笑

田部: でも、やっぱ帰ってきてからすごい感動したかも。
ちゃんとトイレがあったり、地面がでこぼこじゃなかったり。笑
 でもそれは「きつかった」より「感動!!!」って感じかも。

全員: あ~~たしかに笑笑 
6日目とか開発センターについたとき、地面が平らで感動したよね

ー そしたら、家帰った瞬間とか色んな感動で溢れてたんじゃないですか?笑

外村: シャワーはほんっっとに感動した!
ちょうどいいお湯がずっと出てくる!!!!最高!笑

佐藤: しかも、良い角度だしね。笑笑

全員: たしかに良い角度 笑笑

― それって、アドキャンに行ってなかったら絶対に感じることのなかった感動ですね。シャワーの角度を気にしたことなんてないですもん。笑

― アドキャンの目的の1つでもあった「当たり前に感謝すること」は、大人でもこんなに感じているんだなと今聞いてて思いました!

― 子ども達からしたら尚更、家でお母さんが料理を作ってくれていたり、お風呂貯めてくれていたり、洗濯してくれていたり...。
そして、エアコンやトイレ、シャワー…。
そんな当たり前の有難さにきっと気付いたのかな~なんて思いますね!

ーちなみに、みなさんは子ども達と1番距離が近いところで共に過ごしてきたと思うんですが、1日目と6日目で子どもたちのこんな力が成長した!ここが変わった!と思ったところはありますか?

田部: 個々の成長が本当にすごかったのが凄い印象的で...。
最初は、海も水泳もアドキャンも嫌だって言ってた子もいたんですけど、「みんなと一緒に」とか「みんなで楽しむ」って環境だったから、結局その子が海に入らない日がなくて...!
そんな感じで、泳ぎたくない子が泳げるようになる成長をすごい感じたし、班の中でも泳ぎがすごく上手くなった子が何人もいたなと思います。

自分たちの班は他の班に比べて赤帽*が多かったけど、最終的に黄色*にあがったり、周りから評価されたりと、目に見える成長もあったな~、と…  
(*アドキャンでは泳力調査をし、初級→中級→上級の順で赤→黄→青色の水泳帽を被ります)

佐藤: そうだね~... でも、最初はすごいバラバラで大変だったけど、最終的には班が繋がってきて本当によかった

ーそれは、日が過ぎるにつれ段々となのか、なにかターニングポイントがあったりしたんですか?

佐藤: 海の活動のバディはすごい大きかったかも。あの時に、俺らも結構強く言ったりして。

田部: 「周りを見て!」とか「バディ確認して!」っていうのをよく声かけするようにしたら、海以外の場面でもそういう力がついてきたのかもしれない。

金城: 私たちの班も同じで、最初は「自分がこれやりたい!あれやりたい!」って自分のことしか考えてなかったけれど、最終日に進むにつれて、「班で動く」だとか「周りを見る」をみんなが意識するようになっていったのをすごい感じた。

ターニングポイントとしては、3日目に班長副班長と話をしたとき。

私の班は、班長も最初は帰りたい派で、周りを見る力とかまとめる力は元々あるような子だとは感じていたんだけど、やっぱ疲れとか、帰りたいって気持ちが勝ってしまってたみたいで…

でも、3日目に班長副班長と「このまんまだとバラバラになっちゃうかもしれないね」って話をして…、

ストレートに話すとなると、逆にモチベーションを下げてしまったらとか不安だったけど、副班長が班長の心境を理解した上で、副班長ももっと班長と同じくらいの立場で接していってもいいのかもって話をしたんだよね。

そしたら、その二人が4日目以降に凄まじいくらい変わって、自分たちから班のみんなに声かけしたり、必ず30分に1回水を飲んでって呼びかけたり、どの班よりも班長と副班長が支え合ってた班になったと思う。

ー 素敵ですね...! 副班長ってよく名前だけになりがちですけど、班長を支える大事な役目…。そんな副班長の使命を全うしていて、その話し合いが本当に良いターニングポイントになったんだと思います!

外村: 私は、班長の成長がすごい印象的で…。

元々 班長決めの時も、やりたい人がいなかったから、無理矢理その子になっちゃった感じだったんで...。

でも、班の会議の時に、班長はどうあるべきかって話になったりだとか、私たちカウンセラーも「班長の目標がちゃんとできてるかチェックするのお願いしていい?」って他の班の子に声かけてみたり…
あとは、夜の班長会議で他の班長と話したりを重ねたりして…

どんどん班長意識芽生えてきて、最終的には何も言わずとも、積極的に声を出したり、みんなをまとめたりする姿にすごい感動しました!

山田:  みんなの話を聞いていて思うけど、「気付く力」とか、「周りを見る力」、「積極性」、「コミュニケーション力」とか、全員 成長しるんじゃないかな~って思う。

全員: うんうん。成長してない子なんていないと思う。

田部: 色々な成長はあると思うけど、みんなが色んな所で絶対成長してると思う。何かが見違えるくらい大きく成長している子もいれば、全体的にちょこちょこ成長している子もいたりって…

― そう思うと、アドキャンって本当にすごい取り組みですよね…
みなさん口をそろえて「成長してない子なんていない」って…

― 今、子どもたちの成長についてたくさん話してもらいましたが、逆に自分が1日目と6日目で変わったところはありますか?

山田: あ~~、考えてなかったなあ!むしろ教えてほしい笑

外村: 私とかは今小学校で勤務しているけど、子どもたちにハッキリ言うのがずっと苦手で…。でも、危険も伴うアドキャンで「これは言わなきゃいけないこと」を頑張って考えたり、それをハッキリちゃんと言う場面がたくさんあったから、そういうことを言えるようになったのは成長かもしれない!

佐藤: う~ん…、自分が成長したところか~…、難しいな…

山田: 1班のカウンセラーの田部さんと佐藤さんは、お互いに何かないの?

田部: そうだね~…。でも、すごいバランスをとってできたよねって話はずっとしてて。
後半トラブルの多い班で、でも、別にお互い役割決めした訳ではないのに自然と、場を和ませて話しやすい場をつくるのが悠の仕事で、私はその作ってくれた場の中で伝えたい事だとか聞きたい事をちゃんと言うっていうのを上手くできていて…、本当によかった!

― それを聞いていかがですか?

佐藤: 本当に、全く同じことを思ってました。もう感謝です。めちゃくちゃ感謝してます。ずっと感謝しちょっから。アドキャン終わっても、「あん時はよかったな~ありがとうございます~」ってずっと思うと思う。
俺も本当にびっくりなのが、あの時なにもお互い言ってなかったのによい役割ができてて…、

田部: もう本当に、途中誰かが欠けそうになるくらい班でトラブルはあったけど、最後まで全員でやり遂げられたのは、こうやって上手くコミュニケーションをとれてたのからなのかなって思います。

佐藤: あとは、子どもを観察するときに、もっと色んな面から見れるようになった気がする。最初は言動だけしか見れてなかったけど、表情を見れるようになって、次はその子の過去を知ったうえでの行動まで見れるようになった気がする。

全員: あ~、それはめっちゃわかる。

― 子どもたちだけじゃなく、みなさんにとってもこの6日間は色んな壁を乗り越えてきたんですね!

― 実際に参加してみて、プラスでもマイナスでも「思ってたより○○だった」と感じたことはありますか?

外村: 思ってたより悩むんだろうなって初日に感じました。
「カウンセラー」の仕事を言葉でしか伝えられてなかったから、行く前は文字通り子どもたちと一緒にいればいいだけだと思っていたけど、
実際に色々な心境を持った個性豊かな子どもたちを目の前にしたら、「カウンセラー」の仕事ってそんなものじゃない!ってすぐ思いました。

ー 「子どもたちと関わる」って簡単そうに見えて、遠くから見ているだけじゃ分からない、子どもたちを目の前にして初めてわかる難しさや不安がありますよね。

佐藤: でも、俺も不安とかはたくさんあったけど、そんな気持ちになれて嬉しかったって感じたな。その不安は子どもたちに対してだから、自分がちゃんと子どもたちのことを考えられてるんだと思えてちょっと嬉しかった。

金城: でも、私は過去にアドキャンに参加した人たちから「きつい」「つらい」「やばい」「しんどい」って話ばかりを聞いていたから、実際参加してみて思ったよりもって感じだった。それ以上に楽しいことで溢れていたし、なんで過去の参加者がこんなにネガティブなことばかり言うのかなあって。

全員: 行く前に「めっちゃ辛いよ」ってたくさん言われたよね

山田: たしかに、たくさん悩んだりマイナスな感情になることもあったけど、それ以上に子どもたちの変わっていく姿を目の前で見れて本当に参加してよかったと思う。

ー 皆さんにとって本当に色々なことを感じた6日間だったんだなあと今までのお話を聞いて思いました。色々なお話をありがとうございました!

ー 最後に、1年後、アドキャンに参加するか迷っている島留学生/体験生が今この記事を読んでいるとして、一言ずつお願いします!

全員: あ~~、なるほど~…。う~ん、迷うなあ~…

外村: 「色んなドラマが見れるよ!!」
”絶対来て損はない”とか”楽しいよ!”とかは人によって違うから言えないけど、絶対ドラマを見れます!!

山田:「子どもたちの成長を間近で見れるキャンプ!」
純粋に子どもたちと6日間共に生活をして、その成長を共に過ごせる機会ってなかなかない!貴重な経験になるはず!

田部: 「自分も直前まで不安でドキドキしてたけど、それ以上になによりも楽しくて、いっぱい悩んだ!行ってみるのもアリじゃない!?」
興味を持っている時点できっとワクワクしているはず。"行って損がない"とは言い切れないけど、"行ってみるのはアリ"だと自信を持って言えます!

金城: 「日常生活じゃ味わえない瞬間がたくさんあります!」
環境的な意味でも、子どもたちの変化っていう意味でも、そんな瞬間で溢れています!

佐藤: 「めっちゃ大変でめっちゃ楽しい!良いつらさ!」
シンプルにそれだけ、それしかない

ー 今回はインタビューにご協力いただき、誠にありがとうございました。私は現地スタッフとして6日間みなさんの切磋琢磨する背中を見ておりました。そんな姿に少しでもスポットライトを当てられたらと思い、この対談記事を執筆させていただきました。他3人のカウンセラーの皆さまも、6日間 本当にお疲れさまでした。


3.あとがき

この「あま育」マガジンでは、‟海士町の地域共育の現場を、島外から来たインターン生のわたしたち目線からお伝えしたい”ということで、カウンセラーとして参加した島体験生の目線からのアドベンチャーキャンプを取り上げさせていただきました。

そして、今回 私も現地スタッフという立場でアドベンチャーキャンプに参加しましたが、このキャンプの裏側でたくさんの人が汗を流していているから、様々な成長や感動が生まれていることを実感しました。

何ヵ月も前から準備が行われ、アドキャンが終わったと思えば膨大な量の片付けや振り返りや会計処理等…。教育委員会の職員たち自ら軽トラで何往復もし、軍手を付けて物資を一つ一つ運んだりもしました。

また、役場の方や小学校の先生、島留学生など数多くの人が手伝いに参加したり、開催地となった高石漁港の方や海中監視をしていただいた海士ダイビングの方、他にもTシャツ会社の方など挙げ始めるとキリがないくらい多くの人達で支え合い、この6日間が作りあげられていました。

まさに、みんなで共に育て、みんなと共に育つ。
そんな共育の姿をこの目で見れたこと。そして、私もその “みんな” の一員になれたことを嬉しく思います。

そして、そうして作り上げられているこの「あま育」を島内の人にも島外の人にも知ってもらいたい!と強く想わされた6日間でした。
今後とも、今回感じたこの想いを忘れずに、広報活動に勤めようと思います。

ここまでお読みいただきました皆様ありがとうございました。

文・取口 七晴


島との距離は離れても、気持ちはいつも近くに