見出し画像

海士町の様々な数値が分かるAMASAS(海士町版RESAS)の活用事例と誕生秘話

AMASASは、島内の人口や教育など様々な分野のデータをグラフなどで可視化した海士町独自のシステムです。前編では、海士町役場人づくり特命担当課長の濱中さんによるAMASAS開発に至った経緯をお聞きしました。

▼前編はこちらです。


後編では、AMASASを継続的に運用していくために行っていることAMASASを開発するときに苦労したことをAMASASチームのみなさんにお聞きしました。

まず、AMASASチームに所属している田畑陽さんに、AMASASを継続的に運用していくためにどんなことを行っているか、AMASASはどの現場で活用されているかなどをお聞きしました。

田畑さん:AMASASの普及活動・運用に携わっています。


海士町の子ども議会でAMASASを活用

ーーAMASASを継続的に運用するために具体的にどんな作業を担当されていますか?

田畑さん:どのような画面を開発するかが決まれば、あとはデータを収集してグラフにおこしていく作業が必要になりますよね。

いろいろな現場で働く方々にヒアリングを行いながら、条例などを参照して公開可能なデータをピックアップし、実際にデータを共有してもらってシステムが読み込める形に加工し、AMASASに掲載するグラフにおこしていくまでの作業を担当しています。


ーーこの業務のやりがいは何でしょうか?

田畑さん:「現場の業務が進めやすくなったよ」とお声をかけて頂く時に、AMASASに関わっていてよかったなと感じます。存在はしていたもののわかりやく可視化されていなかった数値・データをグラフ化することで現場の後方支援に少しでも貢献できればと思っています。

他にも海士町では子ども議会といって、子どもたちが直接町政に提言を行う機会があるのですが、その際にもAMASASを利用してもらっています。令和4年度の子ども議会の授業の中では、学校の先生や生徒と直接AMASASチームが対話して、データを用いた政策提言について意見交換を実施しました。

実際にこども議会への助言で活用した画面


子ども議会で提言する小学6年生に、海士町の地区別人口構成について、現状を伝えました。


活用事例は他にもたくさんある

ーー子ども議会といった学校現場以外にも活用されているのでしょうか?

田畑さん:はい。子ども議会の他にも、活用されている事例はいくつかあります。
例えば、介護施設の業務量可視化することにより可能となったデジタルでの解決策の検討を、AMASASを活用しながら行っています。最近では、介護関係者が集う会議にも呼んでいただき、地域の高齢者ケアなどのテーマについて議論をする中でAMASASを含めたデータの活用について検討していただいています。

介護施設での介護業務量を可視化するとこうなります。(画像はイメージであり、実際の数値とは異なります。)


現在、海士町役場が推進しているDXの取り組みにも活かしています。海士町にどのような取り組みが必要なのかを調査するために、AMASASを活用し、まちの現状を把握しています。

さらに、関係者で共有しているデータの一つに、下記のような産業を分析するグラフがあります。海士町は人口が少ないため、経営者の高齢化や財政悪化などの理由で、1つの企業がなくなってしまうと、その産業自体がなくなる恐れがあります。そのような事態を避けるため、起業・継業のための仕組みづくりにデータを活かしています。

産業別の従業員数


従業員規模別事業所数


その他には、健康相談会やイベントのためのプランづくりにAMASASを活用しています。
海士町は、地域によって歯や栄養の状態が異なる傾向があります。このような現状をAMASASを活用して地域の健康状態を可視化することで、地区ごとにどのような課題があるかを考え、地域が抱える課題の解決に役立てています。

AMASASを通じて、このような様々な現場でデータ活用の文化が醸成されていることがなによりのやりがいと言えるかもしれません。


海士町のDXを実現するためにAMASASが誕生した

次に、お話をお伺いした方は隠岐國商工会に所属している佐藤賢一さん。AMASASを開発をしていくときにどんなことが大変だったかに関するお話をお聞きしました。

隠岐國商工会 佐藤さん


ーーAMASASを開発するうえで苦労したことはありますか?

佐藤さん:3点あります。
1点目はAMASASのコンセプトを決める段階、2点目はAMASASの開発技術を決める段階、3点目はAMASASの開発計画を決める段階ですね。

まず、コンセプトについてお話します。
地域住民のみなさんをはじめ、町内の事業所、島外関係者のみなさんが積極的かつ常にAMASASを活用してもらうことをイメージし設計しました。その中で一番重要視した点は、海士町の挑戦や課題の打ち手のイメージを持ってもらえるよう可視化することでした。

可視化することで複数の異分野の関係者が正確に事実を捉え、挑戦や課題の本質を踏まえた協議や検討・打ち手の立案ができるようにすることでした。

詳しくはAMASASのパンフレットに記載されていますので、みなさんにぜひとも見ていただきたいなと思います。

多くのデータから海士町の現状を可視化します


AMASASでは、海士町の人口構成やライフステージ、各分野の情報、
分析データなどさまざまな内容が掲載されています!


ーーAMASASを開発するうえで苦労したことはありますか?

佐藤さん:
次に、開発技術をお話します。
一番のこだわった点は、Ruby(ルビー)を開発言語として採用した点です。島根県の所縁のあるRuby(ルビー)を採用することでDX分野でも島根県内での「地産地消」が実現できたと思っていますし、海士町内では恐らく初めての本格的なシステム開発であったかなと思っており、ないものを生み出す精神で「ないものはない」を実現できたかなと思っています。

その中で最も苦労した点は、Ruby(ルビー)の開発経験のあるソフトウェア会社を見つけることでしたね。最終的に出雲市の会社にお願いすることに決まりましたが、開発着手する1週間前くらいに契約したので本当にギリギリでしたね。(汗)

最後に、開発計画をお話します。
1次リリースは非常にタイトなスケジュールであったため、開発手法(アジャイル開発を採用)や役割分担(リーダ、設計、技術調査・実装、データ収集・構築)、定例ミーティングの方法(遠隔ミーティングが前提)など、開発作業が停滞することのないように最初の段階でルールを決めることに苦労しました。

その他にも、事業全体の調整や業務ヒアリングなど多くの苦労した点がありましたが、海士町役場や海士町議会議員の方々や事業所の方々、開発プロジェクトの関係者など多くの方々のご協力とご理解を得られて開発を進めることができ、無事にAMASASを公開することができました。

AMASASのバージョンアップは今後も2年間続きますので、関係者の方々からご意見をいただきながら、更に機能強化をしていきたいと思います。

佐藤さんも産業に関するデータをよく活用していらっしゃるそうです。


佐藤さん:
はじめのコンセプトでも触れましたが、今後は、島内外でAMASASがツールの1つとして活用される仕組みづくりが必要になります。

住民・役場・事業所・島外の関係者の方々に幅広くAMASASをご活用いただくことで、海士町をDX(デジタルトランスフォーメーション)の分野においても先進的な地域として全国へ情報発信していくことができると思います。




持続可能な島を目指すために

ここからは、昨年10月に島体験生として来島し、総務課情報政策係に所属している私が前編後編を通してAMASASチームの3名を取材して感じたことをお伝えします。

私たちがスマホやパソコンを使って、簡単に海士町の人口や移住者の人数などを調べることができるのは、AMASASチームのみなさんが時間をかけて考え、苦労されながら開発してくださったおかげなのだなと感じました。

地域の課題を可視化して、みんなで同じ危機感を持って話し合うために開発されたシステムだということを知りました。同時に、持続可能な島を目指すためにも、AMASASはこれからの海士町にとって欠かせないものになっていくのではないかと考えるようになりました。

実際に私もAMASASを使ってみて、ふるさと納税の寄付金額が年々増加傾向にあること、目標金額達成状況など、AMASASを通じて知ったことがいくつかありました。

中でも、印象的だったことが、納税額に関するデータを見たときです。海士町は、全国からの合計納税額が約2億円であり、特に東京都からの納税が多いことをはじめて知りました。こうした事実から、島根県を応援したいよりよくなってほしいと思っていらっしゃる方々の多さを実感しました。

AMASASには、ほかにも返礼品上位ランキング10返礼品上位5位に関するグラフなどといった面白いデータ、海士町のライフステージ動向のデータも公開されていますので、ぜひ見てみてください。新たな発見があるかもしれません。


ふるさと納税の返礼品について


ふるさと納税について


前編と後編にわけて、AMASASの使い方とAMASASが実際にどんな現場で役に立っているかに関するお話をご紹介しました。AMASASは誰でも見やすい画面で開発されています。ぜひご活用くださいね!

また、こんなデータが見れるようになったらいい詳しい使い方が知りたいなど、AMASASに関するご希望がありましたら、AMASASチームまでお知らせいただけますとうれしいです。

今後も、海士町で暮らすみなさんに、海士町をより住みやすいと思っていただく町にするために、AMASASチーム一丸となって精進してまいります。よろしくお願いします!


LINKS


みんなにも読んでほしいですか?

オススメした記事はフォロワーのタイムラインに表示されます!

島との距離は離れても、気持ちはいつも近くに