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まずは包丁の使い方から。1年間で和食の基礎を身に着ける「島食の寺子屋」とは?

島根県の離島「海士町あまちょう」に1年を通して、和食を学ぶ「島食の寺子屋」があります。
「島食の寺子屋」とは、島で採れた食材を使って和食を基礎から学べる学校。
料理の経験は一切不問。
入塾して最初の2・3カ月は日本料理に欠かせない薄刃うすば柳刃やなぎば出刃でば包丁の使い方からはじまります。

島食の寺子屋

「海・山・里」がそろっている。それが島食の寺子屋の醍醐味


「海」では、校舎から徒歩5分の漁港で定置網漁やイカ釣り漁へ。
「山」では、ワラビやぜんまい、山椒などが採れます。
「里」では、生産者のみなさんと直接話しながら季節の野菜を収穫。

海のとなりに山があり、山のとなりに里がある。これも島ならでは。
距離が近いからできる原体験こそが、島食の寺子屋の醍醐味です。

島食の寺子屋では、その日の朝に校舎に揃う食材を使って料理を学びます。

四季を通して学ぶ1年間


「生産現場に足を運び、生産者さんや1次産業に関わっている人の顔が見えること。それが1番の魅力です。」
そう話すのは島食の寺子屋で料理指導をしている、鞍谷浩史先生。

鞍谷浩史先生

鞍谷浩史 先生
高校卒業後、神戸のホテルで和食の修行を始める。そこから京都にうつり、6年ほど京料理店で修行を積んだ後に、実家にあたる「北白川ともえ」で4年ほど寿司・京料理を出す。2020年に島食の寺子屋常勤講師に就任。


この日は定置網漁に同行していた島食の寺子屋のみなさん。
生徒のみなさんが、目で見て、体験して、自分たちが調理する食材の仕入れも行います。


定置網漁で獲れた魚を仕入れに


鞍谷先生:「魚屋さんに行って柵になったお刺身を買ったり、八百屋さんで同じカタチの大根がズラッと並んでいるようなことは島ではほどんどない。フードロスも含め、食材に関する考え方が直接現場に出ることで大きく変わってくるんです。」

鞍谷先生も仕入れに同行


鞍谷先生も生徒と一緒に食材の仕入れに同行することが多く、新しい発見もあるという。

「生産者さんは実際に作っているからこそ、食材の特徴を生かした食べ方を知っている。それをどう島食の寺子屋に落とし込もうか?日々考えている」と鞍谷先生は話します。


直接生産者さんのもとへ


対応力と臨機応変さ、自分で考える力を大切にしてほしい

2023年4月からは8名の生徒を迎え、新たな1年がスタートしました。

取材に訪れた日は、目前に控えた離島キッチン海士店での実践に向けた準備をしていました。

島食の寺子屋では、少人数制のため先生からも一人ひとりの顔が見え、生徒からも質問をしやすい環境が整っています。

見通しの良い厨房


生徒の周りを鞍谷先生が巡回しながら、指導する場面も多く見られます。
生徒のみなさんも積極的に先生のもとへ行き、調理に関する細かい指導を受けていました。


鞍谷先生も手を動かし指導します



「毎回同じ種類・同じサイズの魚が採れるとは限らない。対応力と臨機応変さ、自分で考える力を生徒達には身につけてもらいたい」と鞍谷先生。

「例えば日本料理の器も四季ごとに分かれていて、何を盛るかによってもお皿は変わる。まずは生徒に盛り付けてもらい、それを見てこうしたほうが見栄えがもっと良くなるんじゃないかと教える」

最初から見本を用意して盛り付けさせると、見本にとらわれてしまう。
まずは生徒のみなさんが「自分たちでやってみること」を大切にしています。


生徒同士でも熱心に意見交換している様子が印象的でした


離島ならではの実践授業

6月8日(木)には実践授業が行われました。海士町内の離島キッチン海士店での夜会席の提供です。
「いらっしゃいませ、飲み物はいかがなさいますか?」
生徒のみなさんは、接客も担当します。


厨房内では鞍谷先生も一緒に、料理の盛り付けがはじまっていました。
料理の位置など鞍谷先生指導の下、細かい部分まで気を配ります。



夜会席は、お品書きとともに一品ずつ料理が提供されるスタイル。

「崎漁港で採れた梶木かじきの味噌漬けです」


左から梶木の味噌漬けと地元の農園で収穫した焼きビーツとコールラビ梅酢漬け


「豆乳寒天には裏山で採れた野苺ジャムを添えました」


左から、豆乳寒天 野苺ジャム、きな粉餅、梅ゼリー



食材はすべて、海士町で自ら仕入れたり、採ってきたもの。

生産者の想いをのせ、ひとつひとつ丁寧に料理の説明をします。

接客も担当し、来店されたお客さまと直接話せる機会も、実践の授業ならでは。島食の寺子屋だからできる、環境なのかもしれません。



2023年の生徒のみなさんは、2回目の実践授業。

1から食に関わる学びの場へ

「自分たちが作った料理をお客様に食べていただくという経験に、緊張しました。」と話すのは生徒の1人津曲つまがりひなさん。


津曲ひなさん(2023年に島食の寺子屋へ入学)


津曲さんは大学4年生の春に学校を休学して、島食の寺子屋に来たそうです。

「東京の調理学校も見ていましたが、ここは自分の目で見て、実際に触れて、生産現場から料理という過程を1番見れる場所。料理人として学ぶべきことが学べると思い、わたしは島食の寺子屋を選びました。」

津曲さん自身も魚を丸々一匹捌けるようになったのは、島食の寺子屋に入ってからだといいます。


離島キッチンに向けてトビウオを調理


津曲さん:「ここに来るまでは柵の状態から捌いていたので、大きいヒラマサを鞍谷先生に教えてもらいながら捌いたことが印象に残っていますね。」

「定置網漁に同行させていただき、目の前で動かなくなった魚を見て、命をいただいていることを実感しました。余すところなく、もっと綺麗に魚を捌けるようになりたいという気持ちが一層高まりました。」



「進路はこれからですが、卒業後も料理をする立場でありたいです。」と津曲さん。


離島キッチンでは料理の盛り付けも



島での暮らしについても聞いてみました。

津曲さん:「海士町では漁師さんや陶芸家さんなど色んな人が身近にいて、気軽に話が聞ける環境です。視野も広がりました。休日には綱引き大会にも参加し、海士の方が親身になって教えてくれたり、綱引きが終わっても関係が続くといいよねと言ってもらえてうれしかったです。」

あたたかい島の風土にも助けられているといいます。


海士町で開催された綱引き大会


イレギュラーに対して柔軟な対応ができる料理人に

鞍谷先生:「生徒のみなさんに大切にしてほしいことは、ひとことで言うと「一期一会」。人もそうだし、食材にしても同じものはない。一個一個に個性があって、それに対してどう向き合っていくかを学んでほしい。1年に1回しか採りにいけないものもある。そういう機会を流さずにとどめてほしい。」と鞍谷先生は言います。



一人前になるためには10年かかるといわれる和食の世界。

四季を大切にする日本料理だからこそ、島の季節のうつろいを「海・山・里」で感じながら料理人としての基礎と柔軟性を培っていただきたいですね。


2024年4月入学生を募集します

和食の入り口に正しく立ちたい方を「島食の寺子屋」では募集しています。
島だからこそ学べることがある。
2024年度1年間コースの募集もスタート。
オンライン説明会も受付中とのことです。


2023年に入学された生徒のみなさん


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