地元でも旅行先でもない、第三の場所。「受け入れてくれる」居心地の良さと温かさを感じる町【海士町アンバサダー】
2024年5月よりスタートした『海士町オフィシャルアンバサダー制度』。海士町が大好きでその魅力をたくさんの人に知ってもらいたい。町作りに貢献したい、関わりたい、応援したい......。そんな方にぴったりの制度です。
今回お話を伺ったのは、元々地方に強い関心があり、海士町での滞在を仕事・プライベート両面で存分に楽しんでいる赤沼 祥太さん。
「まず島を自転車で一周しました」。そう話す赤沼さんに、海士町のアクティブな楽しみ方や町に惹かれる理由について聞かせていただきました。
今回お話を聞いた人
赤沼 祥太さん
東京都在住。お仕事での海士町支援をきっかけに、アンバサダーに。ダイビングやツアーなど、海士町のアクティビティを存分に楽しんでいます。
「おすすめスポットはたくさんありますが、特に紺屋の料理とご主人、稲穂に囲まれた宇受賀命神社、いつも皆さんが温かく迎えてくれるキンニャモニャセンターが好きです。」
まずは自転車で島一周。赤沼さん流・海士町の楽しみ方
── 赤沼さんはアウトドアがお好きだと伺ったのですが、海士町ではどんなアクティビティをされたんですか?
赤沼さん:
初めて海士町に行った時は、自転車で島を一周しました。普通は車で回ることが多いようですが、「自力で島の大きさを知りたい」と思ったんです。でも、計画を立てている途中で、島を一周するには電動自転車のバッテリーが足りないことがわかって。
困っていたら、海士町のコンシェルジュの方が「ルートの中間地点に予備のバッテリーを置いておきます!」と言ってくださったんです。そのおかげで、当日は無事完走することができました。始めは周りの人から「本当に自転車で行くのか」と心配されましたが、結果的にとても良い体験になりました。
── 初回から一大プロジェクトになりましたね! バッテリーを途中で交換するというのが、まるでマラソンの給水スポットみたいです。
赤沼さん:
そうなんですよ。町の中でちょっとした話題になったりして、とても面白かったです。
次に来たのは夏休みで、1日目はダイビングをして、もう1日はコンシェルジュの方にオリジナルの海士町ツアーを組んでいただきました。
「1日かけて町をいろいろ見て回りたい」と相談をしたら、赤沼さんはスペシャルプランなので特別に......と、アクティビティの内容、時間、移動手段、費用、気をつけることなどをまとめた工程表を作ってくださって、大満足なツアーになりました。島一周の時もいろいろと手配してくださって、いつも本当にお世話になっています。
「面白いことができるのでは。」期待と勢いで参加を決めたアンバサダー・スペシャルプラン
── 海士町の滞在を存分に楽しまれている赤沼さんですが、町と関わるようになったのは、仕事がきっかけだったんですよね?
赤沼さん:
海士町の存在は以前から知っていましたが、実際に関わりを持ち始めたのは仕事がきっかけです。町の皆さんと一緒に海士町の経営モデルを作るプロジェクトに関わっていて、町民の方・島留学生へのインタビューなども行いながら、日々財団の方々とディスカッションを重ねています。
月に1回ほど訪れているのですが、大体いつも1〜2日延泊して個人的に滞在しています。
── アンバサダー制度への参加、とりわけスペシャルプランにしたきっかけも仕事が絡んでいるとか……?
赤沼さん:
そうなんです。海士町と関わるようになってすぐにアンバサダー制度のことを知り、ほかの自治体ではみたことのない取り組みだったので興味を持ちました。
プランについては一緒に海士町で仕事をしている上司2人がすでにアンバサダーで、2人とも『プレミアムプラン』に登録していたんです。後から入る身としては、ここが気合いの見せどころかなと......!半分勢いもあって、その上の『スペシャルプラン』に入りました。
もちろんそれだけではなく、町をみていく中で「海士町は深く関わるほど面白いことができるのでは」という可能性を感じた点も大きいです。
金額を見ると高いなって思われるかもしれないですけど、登録して半年ですでに払った以上のものをお返しいただいているなという実感があるので、後悔はまったくありません。それに、海士町に行くと「アンバサダーとしては上司2人よりも僕のほうが偉い」っていう空気がなんとなくあって、楽しいんですよ(笑)。
地方に並々ならぬ思いを寄せて。
赤沼さんが出会った海士町の温かさ、楽しさ、面白さ
── 赤沼さんは地方創生の仕事に携わりたくて、今の部署に異動されたと伺っています。関わりたいと思うようになった理由は何だったんでしょう。
赤沼さん:
元々知らない地域を訪れて、新しいものを知ったり、地域特有の料理を食べたり、地元の人と会話をするのが好きだったんです。
地方って、面白いことをやっている人がたくさんいるんですよね。皆さん、自分のいるフィールドを最大限に生かしながら、外から人を呼び込んで、しかも自分自身の生活も豊かに過ごしている。そういう人たちとの出会いに魅力を感じたというのもあります。
加えて、僕自身は仕事で大手企業とお仕事をすることが多かったんですけど、地方を訪れるたびに「困り事って結構たくさんあるな」「本当に支援が必要な地方なんじゃないか」と気づいたんです。
── なるほど。そういう原体験があったんですね。ちなみに、海士町でも面白いことをやっている方との出会いや印象深い出来事はありましたか?
赤沼さん:
たくさんありました。たとえば、『なかむら旅館』の1階でやっている居酒屋のマスターはとても面白い方です。何というか......すごい人間味あふれる方なんですよ。一見ぶっきらぼうな感じなんですけど、その場にいる人たちを自然とみんなで会話しているような雰囲気にしてくれるんです。
僕の場合ははじめて訪れた時に「君はお酒が飲めるのかい」という会話から始まり、夏休みに再訪した時は「君は何か楽器を弾けるかい」と聞かれて。ドラムが叩けることを話したら、その数分後にはマスターと一緒に中村旅館のステージに立っていました(笑)。
「面白い」で言えば、『隠岐しぜんむら』主催のガイドツアーも面白い体験でした。
海士町を含めた隠岐諸島がユネスコジオパークに認定されるまでの歩みや、固有の生き物のこと、外から来る人を受け入れる町の土壌が出来上がった背景など、海士町に関するあらゆることを教えていただきました。
何より、アテンドしてくれたガイドさんがいわゆる「海士町オタク」のような方で、その方独自の目線で語られる海士町は新鮮で興味深かったですね。
後は、町で長く商店を営んでいるヒトミさんというおばあちゃんには、いつもよくしていただいています。
温かい雰囲気で、話も面白くて、店に顔を出す度「今日は何しに来たの」って、お菓子をくれるんです。「元気にしてるかな」って気になって、来島時には毎回必ず会いに行っています。
── ほっこりするエピソードですね! 人や町との繋がりが少しずつ深くなっているんですね。
赤沼さん:
ありがたいことに、来島する度に知り合いも増えています。アンバサダー同士で交流する機会もあって、来島時にコンシェルジュの方に連絡すると「今、アンバサダーのこの方来てますよ」なんて教えてくれることもあるんです。
──アンバサダーの方々とはどんな風に交流されるんですか?
赤沼さん:
海士町で一緒に飲んだり、東京で行われるアンバサダー向けのイベントで会ったりします。
仕事とプライベートの両面で関わっている人が多いので、今海士でどんな仕事をしているかという会話から始まり、「ここ一緒に取り組めることできるじゃん!」と盛り上がることもあります。
ただ、皆さん、「仕事をしに来ています」という雰囲気はあまりないんですよね。おそらく、海士町という環境が特殊なのか、皆さんの取り組むテーマが面白いからなのかなと思っています。町のためにそれぞれの力を持ち寄って動く、まるで「海士町」という大きなチームの仲間同士のような感覚があるんです。
── 面白がったり楽しみながら、仕事をする。アンバサダーの皆さんは、仕事とプライベートの垣根がないような感じがしますね。
赤沼さん:
そうですね。そういう方々と繋がれるというのも、アンバサダーの魅力のひとつだと思います。
住まなくても深く関われる町。
それは「受け入れてくれる」居心地の良さがあるから
── 東京に住んでいると、身近に興味を惹かれることがたくさんあると思います。そんな中「海士町へ行こう」となるのは、やはり町民の人柄に惹かれるところが大きいのでしょうか?
赤沼さん:
もちろんそれもありますが、海士町全体の「外から来た人を受け入れてくれる」という雰囲気が心地良いのが一番の理由です。
フェリーを降りたらコンシェルジュの方が迎えてくれて。『キンニャモンニャセンター(港に隣接した複合施設)』に寄ると、そこでもまた知り合いが「おお〜、来たんだね!」って、声をかけてくれる。
地元ではないけど、普通の旅行先とも違う、第三の場所とでも言うんでしょうか。そんな居心地の良さと温かさを感じるんです。
── その「第三の場所」という言葉は、いろいろな地域へ足を運んだ赤沼さんだからこそ出てきたように思います。
赤沼さん:
そうかもしれないです。「移住をしてもらうこと」を最終目標として取り組みを進める自治体が多い中、住まなくても深く関わることができたり、外から来る人に対しても受け入れてくれる温かい雰囲気があるのは海士町ならではだと思います。
深く関わるようになって見えてきたのは、町で営まれる「人が人らしく生きる」暮らし。自然のリズムの中、自分で食べ物を作り、地域の人たちと支え合いながら子育てをして、他愛のない話をして寝る。そんな昔ながらの豊かな暮らしがあることに気づきました。
海士町の「ないものはない」というキャッチコピー。これには「大事なものは全部ここにある」という意味が込められているんですが、本当にその通りだなと思うんです。
人と人との距離の近さや、ふと見上げた時に広がる満天の星空。その土地で作られた食べ物のおいしさ。たとえ住んでいなくても、何度も足を運び、深く関わることで、また新たな町の魅力と出会える。
僕自身、「第三の場所」として町や町民の皆さんと関わることで、いろいろなことを知り、たくさんの温かさや面白さ、楽しさに触れてきました。これからも「ないものはない海士町」をたくさん味わっていきたい。そんな風に考えています。