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こじょうゆ糀を仕込む。島の食文化を守りたいと立ち上がった人たち。

海士町で代々受け継がれてきた「こじょうゆ味噌」。その原料となる「こじょうゆばなをこの先の未来に残していくためにーー。

「こじょうゆ糀」とは、海士町の食文化として親しみのある「こじょうゆ味噌」の原料。「こじょうゆ糀」「塩・水あめ・みりん・酒」などを入れてつくるのが海士町の伝統食「こじょうゆ味噌」です。

▼こじょうゆ味噌

しかし、一昨年海士町で「こじょうゆ糀」をつくっていたJAさんが事業から撤退。昔ながらの食文化を継承すべく発足されたのが、こじょうゆ組合さんです。

「こじょうゆの文化を未来に残したい。」そんな想いから立ち上がった、こじょうゆ組合の上田さん、扇谷さん、平田さんにお話を伺いました。


海士町の食文化をこの先も。

ーーこじょうゆ組合を立ち上げた経緯を教えてください。

扇谷さん:
これまで、JAさんが中心になって農産加工場を使って「こじょうゆ糀」をつくっていたんだけど、一昨年に人手もない、利益もないということで撤退してしまったんだよね。
でも、「こじょうゆ味噌を仕込みたい」という地元の人の声もいまだにあって。

こじょうゆ糀がなくなってしまったら、こじょうゆ味噌という食文化がなくなってしまう。それはさみしいなと思ってね。

扇谷さん:
この島はなかなか醤油ができなくて、醤油の代わりに「こじょうゆ味噌」を食べていたといわれていて、味噌は全国どこにでもあるけど、「こじょうゆ味噌」はなかなかない食文化。
隠岐の島には似たような味噌があるけど、甘いなめ味噌みたいな感じでちょっとちがうのよね。

後鳥羽上皇も食べていたと言われている伝統食だし、海士町といったら「こじょうゆ味噌」。
だから、「昔ながらの製法でこじょうゆ糀を残したい。」と思って「こじょうゆ組合」を立ち上げることにしました。

扇谷さん

ーーこじょうゆ組合さんでは、上田さんを筆頭にこじょうゆ糀をつくられているとか

扇谷さん:
昔ながらの製法で「こじょうゆ糀」をつくっているのは上田さんくらいなの。
だから上田さんに習って、その製法を残さないといけないと思ってね。
それと、上田さんも「こじょうゆ」を残したいという想いが強いから「教えるよ!」と快く受け入れてくれました。
また、20年もこの加工場で「こじょうゆ糀」をつくっていたJAの平野さんや協力してくださる地元のみなさんと一緒につくっています。

ーー「こじょうゆ味噌」にはどんな思い入れがありますか?

上田さん:
小さい時から食べてるけんね。自分のじいさん、ばあさんの技術を引き継いで、嫁入りのときからつくっている。嫁には22歳くらいにいったかな。

上田さん

平田さん:
ほんなら60年近く、つくってるんだね。

扇谷さん:
うちの子も、子どものときから食べている味だから、夏に帰ってきたら「こじょうゆ味噌」がないといけんのよ(笑)

上田さん:
おにぎりに「こじょうゆ味噌」をつけて食べるとかいってね。

ーー今、海士町で暮らす子どもたちはどのくらい「こじょうゆ味噌」を知っているんでしょうかね?

扇谷さん:
どのくらい「こじょうゆ味噌」になじみがあるんだろう?

平田さん:
でも、お山の教室(海士町の森のようちえん)の子どもたちに「こじょうゆ味噌」をつけたきゅうりをあげたら、知らない子も結構いたけど、「次はなにしてほしい?」って聞いたら「こじょうゆ味噌がいい!」とつくるたびにあっという間になくなってね。

平田さん

平田さん:
今は、Iターンで移住してきた家族が多いから、海士町で育ったじいちゃん、ばあちゃんがいる家庭って少ないのよ。
だからはじめて食べた子も多かったけどすごくよろこんでくれました。
今年の夏だけでも何回もつくって出したね。

扇谷さん:
だからなおさら、そういう食文化を引き継ぎたいという想いが強いのよ。
「今年、こじょうゆ糀をつくるよー!」っていったら島のみんなが「ほしい!ほしい!」ってよろこんでくれてね。

いままでの製法を引き継いで、昔のばあさんたちがつくってきたつくり方が私たちのこだわり。今回は島根県産の大豆と小麦だけど、のちのち海士町産でできたらいいなと思っています。

ーーこじょうゆ糀をつくって難しかったことはありますか?

扇谷さん:
つくってみたら奥が深いな〜って思って。
1回目は成功したから簡単かと思ったら2回目に失敗してしまって。
発酵するのには、温度がすごく重要なのよ。
2回目は温度が高くなりすぎてしまって、思うようにできなくてね。

もっと簡単だと思っていたけど、結構繊細なの。

昔もばあさんたちが「こじょうゆはうまく寝たか、寝たか」ってよく話していたと聞いてね。
やっぱりそのくらい気にかけていた訳だから、簡単にできるもんじゃないんだなって思ったね。

平田さん:
まさこさん(上田さん)は失敗したことありますか?

上田さん:
それはないね。
わがとこ(我が家)では常に管理してる。

平田さん:
まさこさんは、自分の部屋で一緒に寝て、
常に近くで管理してますもんね(笑)

上田さん:
それと、もろぶたでやるけん。もろぶたにすきまのないようにきちんとつめると少しずつ温度があがってくるのよ。

1時間くらいおくと、勝手に菌が繁殖していく。

温度があがってきたらもろぶたをすこしずつずらして、空気が入るようにする。はじめからつめていたら温度がバーっとあがって、この前みたいに失敗するけん。ある程度菌が付いたらまぜてあげてね。
だからわがとこでは失敗はないの。

上田さん:
夏に「こじょうゆ味噌」を出したら、みるみるなくなってね。
急いで、3日前に仕込んでね(笑)

扇谷さん:
上田さんはもともと生活指導員をやられていた方。
だから、町民の人の食事を指導しないといけない立場だったから余計に地元の食に関心があるのよね。

ーーこじょうゆ味噌のおススメの食べ方はありますか?

扇谷さん:
おにぎりやきゅうりが定番よね。
あと家庭によっていろいろな使い方がある。
炒めるときに醤油でなくて「こじょうゆ味噌」で味をつけるのよね。
うちではなすびやピーマン、サザエと炒めたりするけど、とある家庭は豆腐をいれるんだって。

上田さん:
それに一味をピリピリきかせてね。
なすびをしっかり炒めてから最後に「こじょうゆ味噌」と「こしょ(唐辛子)」をいれた「こしょみそ」も美味しい。

こしょみそ

ーー今後も、こじょうゆ糀やこじょうゆ味噌を仕込む文化が継承されていってほしいですね。

扇谷さん:
食文化を引き継ぐには、海士町のみなさんがなるべく購入しやすい価格になることを意識して商店へ卸さないといけないなと思っていて。
私たちの次の世代にもつなげていってもらいたいからね。

平田さん:
あと、「こじょうゆ糀」が年中つくれればいいんだけどね。
こじょうゆといえば、夏場に仕込むのが特徴。
でも、冬場とか雪も積もって畑もしないような時期に加工場で仕事ができれば暑くもなくて1番いいなと思ってね。

扇谷さん:
でも、育苗器もあるからできるんじゃない?
いままでは、育苗器なんてなかったから夏の暑い時期にばあさんたちが作って食べていたんだけどね。

大豆も小麦も秋だし、それさえ確保しておけば冬の間でもできるんじゃないかなって思ってる。

来年は、みんながお盆に「こじょうゆ味噌」として食べれるように6月、7月くらいに糀を出すことが理想だね。

今年の「こじょうゆ糀」の仕込みはいったん終了とのこと。
お次は「こじょうゆ味噌」を仕込んで島の商店へ卸す予定だそうです。

この製法を次世代にも引き継ぐべく、一緒に活動する若者も集めたいといいます。
島の伝統食をこの先も残していくために。



こじょうゆ糀ができるまで

「こじょうゆ糀」をつくる加工現場にも潜入させていただきました。

60年近く、家庭でこじょうゆ糀をつくってきた上田さんを筆頭に、「こじょうゆ糀づくり」がスタートです。

「こじょうゆ糀」の材料は、「小麦・大豆・米・もち米・麹菌」
まずは、大豆をさっと洗い、窯で25分間煎っていきます。

煎った大豆を冷まして、焦げた豆を取り除いたら、ミキサーにいれて細かく砕きます。

細かくした大豆はふるいにかけてきれいに整える。

お次は、小麦
小麦を研いだら水につけておきます。
お湯を足して3時間くらいぬるま湯につけると時間短縮になるそうです。

小麦をざるにあげて、米ともち米を混ぜ合わせる。

米ともち米をいれて混ぜ合わせた、小麦をせいろにいれて蒸していきます。
蒸気が上がって1時間程度で下のせいろも蒸しあがるとか!

蒸しあがった小麦と先ほど細かく砕いた大豆を混ぜます。

手がつけられる程度に冷めたら、麹菌をいれてさらに混ぜる。

混ぜたら、育苗器の箱に紙を敷いて「こじょうゆ糀」を敷き詰めます。

緑色の機会が育苗器。
育苗器にならべてカバーをしたら30度に温度を設定し、発酵!

次の日・・・
発酵しているのを確認したら手でかき混ぜて、塊があればほぐします。
午後も発酵状態を確認し、再度手返しの作業です。

3本程度、畑のうねのように「こじょうゆ糀」の間に線を引いて、空気の通り道をつくるのもポイントです。

3日目・・・
いよいよ袋詰め!

出来上がった「こじょうゆ糀」は袋に詰められ、

町内の商店へ出荷されました。

お家で簡単に仕込めるよう、パッケージには「こじょうゆ味噌」のレシピ付き✨

3ヶ月のインターンシップ制度で来島した、大人の島体験生が素敵なnoteを公開してくれました🙌

おみやげにもピッタリなこじょうゆ味噌をつくっている若者も😊

こうして海士町の食文化が広がっていく姿はうれしいことですね✨

海士町noteスタッフの我が家でも「こじょうゆ味噌」を仕込んでみました。
毎晩混ぜながら、どんな味に変化するのかが今から楽しみです。

各家庭で仕込まれる「こじょうゆ」。
その味が代々、続きますように。


(海士町note担当:渋谷)

島との距離は離れても、気持ちはいつも近くに