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「ごみ」から考える持続可能な暮らしとは?~島体験生と一緒に考えてみました~

生活の中で切り離すことのできない「ごみ」のお話。みなさんはどんなイメージを持っていますか?海士町役場では、今年の4月から新たに「里山里海循環特命担当」という部署ができました。

「ごみ」にまつわる現状を知っていただくために、島体験の研修プログラムの一環として、里山里海循環特命担当チームがワークショップを実施しました。

里山里海循環特命担当とは

令和5年度4月より、海士町役場に「里山里海循環特命担当」が新設されました。環境整備課より部署が一部分かれ、「里山里海再生、環境衛生、エネルギー、林業、住宅」を担当しています。

本部署では、大江町長が2期目の公約で掲げた3つのカン「ひとの流・暮らしの境・里山里海の循」のうちの一つである、里山里海の循環を推進していきます。


ワークショップを開催した経緯

私たちが暮らす海士町は、平成21年に「日本で最も美しい村連合」に加盟してから15年が経過しました。地域独自の景観や文化を次世代に引き継ぐためには、一人ひとりの意識を高めていく必要があります。

毎月のごみを拾おうデー、ゴミの適正な分別・処理、ゴミの減量化及びリサイクル対策の推進、海岸漂着物の除去など、島の全体の環境美化に努めていかなければなりません。

島の環境美化・島の持続可能な暮らしを維持していくためには、現状、清掃センターの存在が欠かせません。ごみを出して終わり、燃やして終わり、だけでは循環型社会には移行できません。

まずは、今私たちが出している廃棄物を処理している清掃センターの現状を知ることが重要です。

・粗大ごみ置き場の現状 
こちらは清掃センターに持ち込まれた粗大ごみの写真です。「大人の島留学」など滞在人口が増えたことにより、空き家をシェアハウス化するなど、空き家の活用が増えてきました。その一方で、空き家を掃除することで出てしまう大量の粗大ごみの量も増えている現状があります。

粗大ごみ置き場は当初の置き場の範囲を超え、溢れ出しています。清掃センターの作業員も人手不足の状態であり、粗大ごみの解体作業までなかなか手が回っていない現状があります。

・焼却場、最終処分場の耐用年数
海士町のごみ焼却施設は建設から24年を迎えており、施設の老朽化が深刻です。近い将来直面する問題に対して、私たちは今の暮らしを続けていけるのか、みんなで考えていく必要があります。

こういった実情がある中で、まずは知ってもらう、興味・関心をもってもらう機会を作るため、島体験生の研修プログラムと連携し、「ごみ」について考えるワークショップを実施しました。


ワークショップ内容

1 海士町のごみ処理の現状

海士町は一人当たりのごみの排出量が336キログラム(R3・可燃ごみ)と全国の中でも多く、リサイクル率も12%と全国平均よりも下回っています。

その数字の背景には様々な要因が考えられますが、離島という地理的特性上、島内でリサイクルすることを完結させることが難しく、本土のリサイクル業者に委託しなければならないことで、海上輸送費を含めた通常以上の処理コストがかかることも影響していると考えられます。

民間組織でも、環境に配慮した様々な取り組みが始まっていますが、行政としても更なる取り組みが必要だと認識しています。

海士町役場 環境衛生担当より説明


2 暮らしの変化を振り返る

暮らしの中から出てくる「ごみ」について考えることは、暮らしを見つめ直すことでもあります。今回はゴミ問題やリサイクルの取り組みの知見を深める映像を視聴し、島での暮らしの振り返りをしました。

①プラスチックごみ問題を知る
最初に、マイクロプラスチック問題についての映像を視聴しました。映像の中では、いかに海洋生物や私たち人間が知らない内にプラスチックを体内に取り込んでしまっているのかを痛感させられました。

流出したプラスチックは、数百年から千年分解されず環境中に残り続けます。私たちが日々生活の中で出しているプラスチックについて改めて危機感を持つ機会となりました。

視聴した映像 :【最新研究】プラスチックの行方~「水の国」からの警鐘~地下水にもマイクロプラスチックが…海洋汚染、魚の大量死…私たちにできることは?【テレメンタリー2023】KAB(熊本朝日放送)


②暮らしの変化を振り返る
次に、リサイクルの取り組みで有名な自治体(鹿児島県大崎町・徳島県上勝町)に関する映像を視聴しました。どちらの町もリサイクル率80%を超えており、学ばせて頂くことが多い自治体です。

映像の中では「捨てるときのことを考えて、買い物するようになりました」というフレーズがあり、環境が変わることで意識変容が促されることに着目しました。それを切り口に、島体験生に来島前後でどのような暮らしの変化があったのかについて振り返ってもらいました。

視聴した映像:気候変動に取り組む「リサイクルのまち」大崎町(ロングバージョン)

視聴した映像:リサイクル率80%以上の町。徳島県上勝町【ゼロ・ウェイストセンター】【ホテルWHY】


2つの映像を視聴した島体験生からは、

「島に来てからマイボトルを使うようになった」
「自作の弁当を作るようになった」
「プラスチックごみを増やさないことを意識したい」
「ごみになった後の事を考えて買うものを選択していきたいと思った」

などの気づきの声が挙がり、みなさんの中で暮らしの変化があり、今後も意識していきたい行動変容に繋がったことを認識できました。


3 粗大ごみ解体作業

私たちが出したごみがどう処理されているのかを知ることは、日々の暮らしを見つめ直す機会となります。そこで実際に清掃センターに持ち込まれる粗大ごみの解体作業を島体験生にも取り組んでもらいました。

粗大ごみ解体作業の様子。


実は海士町の粗大ごみは、機械による処理ではなく、人の手で一つ一つ手作業で解体処理されています。実際に体験してみると、4人チームで取り組んでも時間が15分程かかった中で、普段の解体現場では1人で解体されている作業員さんの労力の大きさを痛感した時間となりました。

黙々と解体作業。


一人では大変な作業も、力を合わせることで楽しく。


現在島体験生が住んでいるシェアハウスも、空き家清掃を経て粗大ごみが発生している背景があります。自分たちの暮らしから出ているごみと向き合うことで、自分事として捉えられたのではないかと思います。


4 気候変動から考える ~私たちができること~

今後未来に向けて私たちはどうしていけばいいのか、どこに向かっていけばいいのか。近年の気候変動の状況より、私たち人間がどれほど地球温暖化問題に加担しているのかについて、里山里海循環特命担当課長の大野さんが話しました。

私たち一人ひとりに何ができるのか、次世代の未来のために私たちは何が求められているのか、そういった議論で熱く盛り上がる時間となりました。

気候変動問題に触れる


今回、環境に関する島体験生へのワークショップを実施し、改めて私たちの身近でもできることはあるし、行動に移せることがあるのだ、と実感しましてもらえました。

同時に加速する気候変動問題、環境問題という大きなテーマに対して、私たちは、どう立ち向かっていけばいいのか、頭を悩ましてしまうこともしばしばです。ですが、今回一つの場に集まり皆で考えることにより、一人一人が小さな一歩を踏み出せるきっかけ作りになれたのではないかと思います。

身近な日々の暮らしの中で、思わず通りすぎてしまうモヤモヤや違和感に対して少し立ち止まって自分に問いかけてみる。そして小さなアクションを起こしてみる。その過程の中で、少しずつ共感していく仲間が増え、いつしか未来・次世代に繋ぐ大きな力となり得るのではないでしょうか。


あとがき

里山里海循環特命担当として、noteでの情報発信は今回が初めてですが、こういった場をはじめとして、海士町内への発信を広げていきたいと考えています。

日々多彩な営みを与えてくれる美しい山と海。その価値を守り、次世代に繋ぎ、持続可能な島をどうすれば実現できるのか。里山里海循環特命担当として、共に考える場面、機会を増やしていけたらと思います。

(里山里海循環特命担当所属 大人の島留学:小野)

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