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まずは出店する自分たちが楽しむこと。日常を彩る島のマルシェ

毎月第1土曜日に、海士町で行われている「まるどマーケット」。マルシェのような雰囲気で、パンや野菜、海産物など、さまざまな食材や食品、雑貨などを買うことができます。

海士町の人が、海士町のものを、海士町のために。島らしさがつまった「まるどマーケット」は2021年12月に1周年を迎えました!

今回は「まるどマーケット」がどうして開催されるようになったのか、まるどマーケット実行委員の藤澤さんにインタビューをさせていただきました。開催の経緯や想いなど、まるどマーケットについて詳しくご紹介します。

取材を快く引き受けてくださった藤澤さん。


▼まるどマーケットの様子はこちら


食+交流の場+実践の場=マルシェ

2020年12月から、ほぼ毎月開催されている「まるどマーケット」が生まれたきっかけは、大きく3つの出来事があったと、藤澤さんは話します。

1つ目は、フランスで見たマルシェに心惹かれたこと。
3か月間、家族でフランスに暮らしたことがあるという藤澤さん。その時にみたマルシェが、自分が思い描いていたイメージと少し違うところに驚きを感じたそうです。

藤澤さん:毎日どこかでマルシェがある。それぞれのマルシェは週に1回しか開いていないけれど、毎日色々なマルシェが町の中にあって。それが朝からのマルシェもあるし、昼からのマルシェもありました。常にどこかしこで、マルシェがある。その光景がなんとも不思議でした。」

フランスのマルシェ:ついにマルシェに行ってきた!-Marché place Carnotより

マルシェに訪れてみると、見たことのない食べ物であふれている。出店者さんに「どうやって調理するのがおすすめですか。」と聞いて、直接情報をもらえる。教えてもらった方法で食べてみて、次にまた買い物に訪れたときに、感想を伝える。

この自然と生まれる交流の場と、土地ならではの食文化に触れ合う場として、藤澤さんはマルシェに魅了されました。

2つ目は、「食の生産者さん」にとっての実践の場をつくりたいこと。
日常の島暮らしの中で、食材から季節の違いを感じることはできるけれど、商売ベースになっていないものがたくさんあると感じていた藤澤さん。

海藻や野菜など、今は” ちょっとだけ "作っているけど、これから専業農家としてやってみたい。でも、心理的なハードルが高く、一歩を踏み出せない人がいることから、島で暮らす誰もが、お試しで実践できる場所があるといいなと考えていました。

藤澤さん:「出店している人の中で、実践の場としてカレーを作っている人がいます。その人の本業もあって、いきなり店でカレー屋をやるのは大変だけど、出店することでだんだんファンが増え、その先に、店をやってもいいかなと思える一つの勇気になる。そのような実践できる、中間地点のような場所を作りたかったんです。」


3つ目は、海士町であったゲリラ販売に遭遇したこと。
2020年11月に海士町にある農園のムラーズファームさんがされている朝市を発見した藤澤さん。なにやら楽しそうな雰囲気に誘われてちょっぴり寄り道をしてみたところ、収穫の都合で急遽、白菜が売られていました。

藤澤さん:「採れたての野菜を生産者さんから直接買えること。朝市に人が集まり交流の場が生まれていること。その瞬間がただただ楽しかったんですよね。」

この出来事をきっかけに、海士町でもマルシェをしてみたい。その思いが一層強くなったそうです。

ムラーズファームさんの朝市:
Müller's Farm(ムラーズファーム)の朝市トラックセールに遭遇!より

幸せの価値観を届ける

このゲリラ販売に出会ってから約1か月後に「まるどマーケット」を開催。2022年2月までで、まるどマーケットは計10回も開催され、島のみなさんに愛されてきました。

藤澤さんは、改めて1周年を振り返ってみて、まるどマーケットは幸せを形にできる場であると話します。

藤澤さん:「人にはいろいろな幸せの形があって、その中でも私は美味しいという幸せが好きなんです。年齢・性別・国籍問わず、誰でも美味しいものが好きだし、食べればわかるシンプルさと、共有がしやすい「幸せ」。それがまるどマーケットでより形になって見えるのが楽しいです。」

まるどマーケットでは、「食」のほかにも、高校生が発信するミクロネシアについての発表など、「自分の好きを届ける場」でもあります。自分が良いと思うものを、幸せに繋がるような価値観を、目に見えるような形にする場になる。それが幸せなことなんだと藤澤さんは話されていました。

隠岐島前高校生による発表

今月の海士町が表現される「まるどマーケット」

「まるどマーケット」では、マイ容器やマイ袋の使用に積極的に取り組み、環境に配慮した活動も行っています。また、海士町の食材を使用し、地産地消を意識した出店を心掛けるなど、海士町らしさがつまっています。

その一方で、出来るだけ枠にとらわれず、自然に起こるものに抗わないようにしているそうです。

町民の10%が移住者の海士町。地産地消だけにとらわれず、自分たちが以前住んでいた地元の食文化を伝えることも徐々にはじまっています。

藤澤さん:「地産地消ではないけれど、移住者が多いからこその " 海士町らしさ "を感じますよね。こうあるべきだ!と意識しすぎず、自然とふんわり、みんなの方向性がわかっていれば良いのかなと、そういう緩さでやっています。」

ヤギ肉のBBQ。ムラーさんが育てたヤギと一緒にファームで育った野菜が一皿に。


また、開催場所にも少しポイントがありました。普段は海士町の玄関口、菱浦地区の広々とした海岸沿いで開催されていますが、

7・8月にはリニューアルオープンしたばかりのEntô広場で。
2月には、風(海士町は日本海の離島のため、強風になってしまうことも)の関係で、海沿いから少し離れた隠岐神社の向かいの島のパン屋さん「つなかけ」の広場で開催されました。

藤澤さん:「本当は決まった場所で開催することにこだわっていました。でも、海士町のそのタイミングを表現するのもいいんじゃないかなと思ったんです。」

風が強すぎるから、場所を変えてみる。出店者に合わせて、2部制にしてみる。暑い夏の開催は不安だから、夕方に開催してみる。など、

時折、状況に合わせながら、その時にある季節の食材、その時にいる出店者、その時の自然条件から、自然と「今月のまるどマーケット」ができるそのタイミングに抗わないようにされていました。

7,8月はEntô広場にて行われました。


藤澤さん:
「 " その時 " に合わせて変えているのは、まるどマーケットを続けていくことが1番大切だからです。続けていくために、その時のベストと、その時の自然さを大切にしています。

まるどマーケットを1回のイベントで終わらせたくない。スペシャルなイベントではなく、日常を彩るイベントでありたい。日常の中に、月に一度この場を作り続けていたいです。」


なにより出店者が楽しむこと

これからも毎月開催されていく「まるどマーケット」。
新しく島に来たみなさんも、島で暮らす地元のみなさんも、混じり合った交流の場として、自分の特技を披露する場として、使ってほしい、と話します。特に、農業や水産業の生産者さんの方にもっと興味を持ってほしいそう。

藤澤さん:「食材の美味しさや食べ方など、生産者さんは特に詳しい。その話を直接聞くことができる空間があると、 もしかしたら" 食 " にもっと興味が湧くかもしれません。そこから生産者さんとお客さんの関係性も次につながっていくと素敵ですよね。」

また、これから生産者さん同士のコラボが出てくることを楽しみにしているそうです。海士町で獲れた食材を使って、調理されたものが出店されると、もっと可能性が広がるのではないでしょうか。

藤澤さん:「地元で活動されているたくさん方々も、自然と出店したいと思える場になっていれば嬉しいです。もっと「まるどマーケット」が、毎月ある当たり前のものになっていくと、やってみようかと思える人も出てくるかも知れない。あれこれ考えすぎず、楽しみたいと思います。」

まずは出店する自分たちが楽しむこと。「今月は何を出店しようかな」と、出店者同士で楽しく話し合いながら、毎月の海士町を少し彩る「まるどマーケット」にしたいと藤澤さんは話していました。

2月のまるどマーケット出店者のみなさん

3月のまるどマーケット

次回は3月5日(土)、つなかけ前で開催されます。
漁業協同組合で働く藤澤さんは、今回、岩ガキを出店されるそうです。
魚介類が好きだからこそ伝えたい。そんな思いが詰まっています。
みなさん、お楽しみに!

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海士町のみなさんへ
海士町で新しく生まれた企画や新商品などがありましたら、ぜひ海士町総務課(TEL : 08514-2-0115)までお知らせくださいね。海士町noteやあまチャンネル(島のケーブルテレビ)などでご紹介できればと思います。

[文:大人の島留学生 嘉根]


島との距離は離れても、気持ちはいつも近くに