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「ユニークさ」と「スピード感」。人事のスペシャリストが惹かれた海士町の魅力とは【海士町アンバサダー】

2024年5月よりスタートした『海士町オフィシャルアンバサダー制度』。住んでいる場所を問わず、海士町が大好きでその魅力をたくさんの人に知ってもらいたい。何より自分自身が経験を活かして町作りに貢献したい、関わりたい、応援したい......。そんな方にぴったりの制度です。

2024年10月現在、アンバサダー制度の参加者は約150名。年齢や居住地、職業に関係なく、さまざまな方が活動されています

noteの企画では、毎回異なるアンバサダーの方に登場していただきます。人の数だけ、海士町に抱く思いや感じる魅力があるはず。それぞれの関わり方・楽しみ方についてお話を伺いました。



今回お話を聞いた人

桑原 孝典さん
神奈川県在住。経営者候補向け研修プログラム『SHIMA-NAGASHI』の参加をきっかけに海士町のファンに。長年の人事キャリアを活かし、海士町の人材開発や研修に携わる。
「海士町のおすすめスポットはいくつかありますが、北分大橋からの眺望や宇受賀命神社からの田んぼの風景が好きで、毎度来島時には車でフラッと立ち寄るようにしています。」


「東京へ戻ってすぐ、海士町の求人を見始めた。」桑原さんを突き動かしたきっかけとは?


── 現在、桑原さんは海士町オフィシャルアンバサダー(以下、アンバサダー)として毎月来島しながら、人事の経験を活かして活動していますね。そもそも海士町との関わりのスタートは何だったのでしょうか。

桑原さん:
私が以前勤めていたパーソルホールディングスでは「越境学習」という、いろいろな会社の人が集まり学びを得るためのフィールドワークを行う活動が盛んでした。そのフィールドのひとつが海士町だったんです。

社内で海士町に訪れた人みんなが惹かれている様子を横目で見ながら「そんな良いところなのかな」くらいに思っていました。

そしたらある時、同僚のひとりが海士町の魅力にすっかり取り憑かれてしまい(笑)、ついに移住・転職までしてしまったんです。

その彼が勤める「風と土と」が提供する『SHIMA-NAGASHI(海士町で実施される次世代リーダー・経営者候補向け研修プログラム)』に「参加してみないか?」と誘われて、2024年8月に来島したのが一番最初のきっかけですね。


── はじめて海士町に訪れて、どんな印象を持ちましたか。

桑原さん:
みんなが惹かれるのも納得の魅力があるなあと。海はきれいで、建物も風土に応じていて日本の原風景が残っている。素直に「美しい島だな」と感じましたね。後はやっぱり、自治体の取り組みがユニークだなと。

僕自身、学生時代に都市行政論・地方分権を専攻していて、東京一極集中が果たして日本にとって良いのかなどを学んできたんです。だから、地方創生や地域活性化に精力的に取り組んでいるという点において、海士町の取り組みは長年関心を寄せてきた分野だったんです。

その背景もあり、『SHIMA-NAGASHI』で町長をはじめ、いろいろな人と話をする中で「皆、一生懸命に海士町を動かす気概があって面白いな」「応援したい」という気持ちが湧いてきてしまって。

なので、海士町から東京に戻ってきて、翌日には海士町の求人情報を見始めていました

当時、『島前ふるさと魅力化財団(以下、財団)』の人事担当者の求人が出ていて、募集要項には「30〜35歳の方」と記載されていたのですが、46歳の自分は対象外でしたが海士町への熱が講じて応募してしまいましたね(笑)。


── それが現在の人事アドバイザリー業務のはじまりだったんですね!

桑原さん:
そうなんです。今は海士町の人事アドバイザーとして「採用」「教育」について関わっています。具体的には、「大人の島留学」の参加者の採用アドバイスやキャリア研修の講師、各事業所向けの研修などを行っています。


共通点は海士町。ゆるく、ひろく繋がる「人の輪」 


── アンバサダーには、どういった経緯で参加することになったのですか?

桑原さん:
アンバサダー制度がスタートする際に、お世話になっている海士町職員の青山 達哉さんから「今度こういう制度ができるから入らない?」って勧められて、ふたつ返事で入っちゃいました。

ちなみに、僕が入っているスペシャルプランは家族ひとり人分無料の特典があるので、実は息子もアンバサダー会員なんです。まだ一緒に行けてないので、いつかふたりで海士町を巡りたいですね。

── 滞在中は仕事、プライベート含めてどのような過ごし方をされていますか?

桑原さん:
毎月4〜5日ほど滞在しています。その間みっちり仕事をしているというより、仕事とプライベートがグラデーションのように混ざり合った過ごし方をしていますね。

大体、週末の朝早くに神奈川の自宅を出発して、お昼頃に海士町に着きます。その日の午後はほぼフリーにしていて、地元の人と海へ潜りに行ったり、ほかのアンバサダーが島に来ていたら一緒に飲みに行くこともあります。

月〜水曜日は基本的に仕事で、海士町関係のミーティングや研修講師、ほかの業務をリモートでやっています。


── アンバサダー同士の交流もあるんですね! どのように連絡を取ったり、交流をしているのでしょうか......?

桑原さん:
アンバサダーが参加するSlackのコミュニティがあるんです。「#来島宣言」っていう専門のチャンネルがあるので、来島した時投稿すると、同日に来ている人と会うなどコミュニケーションが生まれたりしますね。

アンバサダーコミュニティ(slack)では、オンライン上でメンバーの皆さんが交流しています。


── それは面白いですね。ちなみに、アンバサダーの皆さんは仕事で海士町に関わっている方が多いのでしょうか?

桑原さん:
仕事で関わる方はもちろん、単純に海士が好きだからという理由でアンバサダーになっている方もいれば、海士町で学術的な研究をされている方など、いろいろな方がいる印象です。

ちなみに、アンバサダーのコミュニティを盛り上げていこうという動きもあって、東京でイベントが開かれることもあります。僕も、日本橋にある『離島キッチン』で「スナックあまのわ」というアンバサダー交流会の1日店長をやる予定なんです。海士町産の牡蠣やサザエをアテにお酒を飲む楽しいイベントです。

飲みの席では相手の肩書きを知らずにカジュアルに話していることもあって、ついついタメ口でお話をしていたら、実はどこかの会社の偉い人だった! なんていうこともありました(笑)。


── なんだか、「海士町」という共通項をもとに強い結びつきが生まれて、そこからみんなが広く繋がっていっている感じがしますね。

桑原さん:
そうですね。「海士町が好き」ということで接点が生まれて、会話や仕事を通してひとつひとつが濃くなっていく感覚があります。


スピード感とユニークさ。海士町だから、できること。


── 人事のスペシャリストとして日本各地の自治体と関わってきた桑原さんの目線で、海士町だから得られているものや、独自だなと感じることを教えてください。

桑原さん:
やっぱり海士町は、自治体としての取り組みが先進的でユニークですよね。

いろいろな自治体をみていると、どこも根本的な課題は一緒で、人口減少→税収減少→人口減少→……という悪循環に対して打ち手がなく、どうしても取り組み自体が似通ってくることがあるんです。

そんな中、海士町は「大人の島留学」「魅力化プロジェクト」などほかの町にはない新しい取り組みを打ち出して、それをどこよりも早く進めている。そこが一番の強みだと感じています。


── まさにこのアンバサダー制度も、関係人口におけるユニークな取り組みですよね。

桑原さん:
そうですね。いま関係人口という言葉は普及していますが、「具体的に何をやっているの」と聞かれた時に答えられる自治体はあまり多くはないと感じています。

その点海士町は、住む場所が限られているという面もあって、移住を促すのではなく、町との関わりを深く持つことにしっかりと力を入れている。関わりがあれば遠くに住んでいても、ふるさと納税やクラウドファンディングなどで応援してくれる。そういう仕組みを具体化して、成果も出しているというところが素晴らしいなと思います。

大人の島留学」も独自ですよね。面白いのが、海士町は「別れの比率が高い町」なんです。4月になると一斉に200人が滞在するようになり、翌年になると7割は翌年に町外へ戻っていく。人口2,300人のうち140〜200人、つまり毎年1割弱の人口が入れ替わるような町なんですよ。

だから海士町にいると、期間限定の暮らしを通して「人生は有限だ」ということを実感したり、いつか別れる関係だからこそ人との距離が縮まったり、気楽さが生まれたり......。

1〜3月になると、「大人の島留学」できた若者から、海士町に残るか本土に戻るかよく相談を受けるのですが、自身の経験や考えに触れて一助になっていれば嬉しく思っています。


── 最後に、海士町に期待していることや桑原さん自身の展望があれば教えてください。

桑原さん:
これからも「海士町らしさ」や住んでいる人たちが大切にしているものを損なわずに、先進的な改革を進めていってほしいなと思っています。

効率や合理性を突き詰めていくと、どうしても都市部と変わらなくなってしまう。そうではなく、海士町持ち前のスピード感やユニークさを突き詰めながら、そのエッセンスが他の地域のモデルケースになるといいなと考えています。そのために、僕自身も海士町をひとつの組織と捉え、人事という側面から今後も積極的にまちづくりに関わっていきたいです。


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