築100年の米蔵を改修してうまれたゲストハウス「たちばな」が、地域と移住者をつなぐ架け橋に。
築100年の米蔵を改修し、
海士町北分にオープンしたゲストハウス『たちばな』
「いらっしゃい。コーヒー飲んで休みなさい」
中に入ると、笑顔で迎えてくださったのは、ゲストハウス『たちばな』を開業した扇谷光恵さん。
迎えてくださった1階はキッチンと飲食スペース。
温白色の照明に照らされる室内はなんともあたたかみのある空間です。
タンスやスリッパラックなど昔ながらの家具に合うように相談を重ねながら建てたと話します。
2階にあがると、『三郎岩』と『二股島』という海士町にある奇岩と無人島から名前をとった客室が。
内装は米蔵らしさを残しつつ、木をベースとした統一感のあるお部屋です。
部屋の名前でもある三郎岩の写真が飾ってある。
そんな優しさも粋な計らいですね。
ゲストハウス開業のきっかけは、「海士町に来たくても宿がいっぱいで泊まれないときがある」そんな宿事情を解決するためだったといいます。
海士町内には10以上の宿泊施設がありますが、時期によっては宿が埋まってしまい、海士町での滞在が難しくなってしまうときがあります。
「視察の方や研修で来た人が宿がなくて困っている。そういう人たちが泊まれたらいいなと思っているの。1月も東京からお仕事で海士に来る人が泊まる予定でね。」とうれしそうに扇谷さんは話します。
月に1度は、集う場所。
さらにゲストハウスとは別の一面も扇谷さんのこだわり。
それは『サロンたちばな』という町内向けの交流サロンです。
サロンたちばなでは、月に1回交流サロンを開くことを目標としています。
ちょうど取材日は、第二回目の開催日。
この日のテーマはもちつきとしめ縄づくりです。
地域のみなさんもぞくぞくと集まってきました。
「トトロの世界みたいでしょう。」と案内してくださったかまどでは、おもちつきに使うもち米が蒸されていました。
以前、集落支援員として活躍していたこともあった扇谷さんは、海士町のあそび場『あまマーレ』で子育て中のお母さんと島のおばあちゃんが交流できる会『島ばっぱ交流会』をつくった発起人。
2014年からはじまり、今もなお、親しまれているイベントです。
そのときから「いつか人が集まる場所をつくりたい」という想いがあったとか。
いい具合に蒸しあがったみたいですね。
ほっかほかでおいしそうなもち米。
「ほら、ぺったんがはじまるよ!」と扇谷さんの声が。
臼と杵でおもちつきです。
はじめて道具をつかう子どもたちも。
「杵がとっても重たかった!」と興味津々。
なかなかできない経験ですよね。
ついたおもちも丸める作業。
もちもち、ふわふわ。
食べることが待ち遠しい。
味付けもレパートリーが豊富でした。
のり醤油に手づくりのゆずジャム。
王道のあんこに大人気だったきなこ。
やっぱりつきたては絶品ですね。
「かわいい、しめ縄だよ。」とレクチャーしてくださる扇谷さん。
お腹を満たしたところでしめ縄づくりのスタートです。
まずはわらを編むところから。
扇谷さん:
しめ縄は私が作ったときに、わらが余ったからもったいないなって思って考えたの。こういう風に簡単に作れる。
大人の島留学の子たちも家の前に飾りがしてあるのと、ないのとでは地域からの見え方もちがうからね。
そんな優しさから企画が生まれたんですね。
こんなに上手に編んでいる方もいらっしゃいました。
完成形がこちら。おかげでよい年が迎えられそうです。
外では、北分で採れたお野菜の販売も。
なんとすべて100円と驚きのお値段です。
こちらのお野菜も大盛況でした。
参加された方からは、
「やりたいことが溢れてくるとおっしゃって動いているのってすごいなと思います。この蔵がコミュニティスペースになっていて、おもちつきとかしめ縄づくりとか、おばあちゃんたちが教えて、それを教えてもらいたい若者たちがやってきて。そういう部分でみんながうまく集まる仕組みになっているのかなぁって思います。」
「いつも支援センターとか図書館とか決まった場所で集まるから、こうやって違う場所でイベントがあるとうれしいです。そして美味しいものが待っているのが幸せ。」
といったうれしい声も。
扇谷さん:
今月は、もちつきとしめ縄。
来月は何しようかなぁって思ってるの。
琴はちょっとやってたけん、仲間を集めてみんなに琴を体験して、触ってもらえたらいいなと思ってる。
私ひとりじゃできないから、月1回はだれかとコラボをしてね。
と交流の幅を広げたいと話します。
地域の方と協力しながら運営しているサロン。
11月に行われた第一回目は、海士町に住むママさん3人で活動している「たべもの研究所」さんとのコラボでした。
ママさん方がつくるこだわりのメニューとともにお茶をしながら異世代交流をするイベントは、あいにくの天気にもかかわらず約30人が集まり、交流を深めたといいます。
「北分の人だけじゃなくて、子ども連れの人とか大人の島留学の人たちが顔見知りになったら嬉しい。北分区のいろんな人と話して、なかよくなったらいいんじゃないかって思っている。」と扇谷さん。
「地域の方とも交流ができるゲストハウス」
心もホッと一息つく宿は、とても素敵な空間でした。
(R5年度 大人の島留学生:渋谷・柿添)