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「当たり前は人の数だけ存在する」カメルーンから帰国したJICA海外協力隊の北川さんが伝えたいコトバ

2022年1月にJICA海外協力隊グローカルプログラムの一環で海士町で活動されていた北川奈々さん。同年の7月からカメルーンで幼児教育の活動をスタート。

そして二年が経ち、無事帰国。海士町にきてくださったタイミングで報告会が開催されました。

「北川さんお帰りなさい!」と歓迎を受けてはじまった報告会。
カメルーンでの暮らしや活動について詳しく教えてくださいました。


JICAとは?
JICA(ジャイカ)は、日本政府の開発途上国支援(政府開発援助:ODA)を一元的に行う独立行政法人です。開発途上国の社会課題の解決や地球規模の課題の解決に取り組み、日本と開発途上国とのつながりを深めることを目的としています。

独立行政法人 国際協力機構 JICA

「カメルーン」って一体どんな国?

まずは北川さんが、カメルーンの暮らしや文化について話してくださいました。

北川さん:
北川奈々と申します。
2021年から都立の保育園で働いていまして、趣味の旅行が興じて半年間仕事を休んでバックパッカーになり、南米を旅していた過去がありました。

その後、コロナ禍に最初の協力隊の募集を受け2022年1月にグローカルプログラムの一期生として海士町のぶどうの農園で活動していました。そして同年の7月末にカメルーンへの派遣が決まり、現地の幼稚園の先生に様々なアクティビティを教える活動をしました。

北川さん:
カメルーンはアフリカの要素をギュギュッと濃縮したような国と言われていて、リトルアフリカ、ミニアフリカとも言われています。人口は2791万人ほどでやっぱり日本に比べると非常に少ないですね。(日本の人口は1.2億ほど)

日本から約1.3万kmも離れている国 カメルーン

北川さん:
公用語は「フランス語」と「英語」の2つなんですが、カメルーンには250もの民族がいると言われていましてそれぞれの民族が違う言語を話す「現地語」というものがありました。

私の村では「バサー語」という現地語が使われていました。

主食は甘味の少ないバナナに似たような「プランテン」を揚げたものや「キャッサバ」という芋を茹でたり、あとはお米やパンなどを食べていました。

後は一番人気の国民食「ンドレ」ですね。
こちらは「ンドレ」という植物の葉っぱをすりつぶして、ピーナッツペーストと一緒に煮込んだものです。「これを好きだ!」と言っておけば地元の人に、「通だね〜」みたいな感じでよろこばれます(笑)

私は、「ソースゴンボ」というオクラのスープがお気に入りで、屋台で見かけてはよく食べていました。

カメルーンの食べ物 

北川さん:
また、インフラについてですが、私の村は首都の近くだったので比較的整っている方でした。それでも水が出る時間は1日3回、朝昼晩と毎日決まっているのでそれに合わせて生活リズムを整えていました。

ただ、断水で1日中水が出なかったり、停電も起きるのが当たり前だったので、水はペットボトルや樽なんかに溜めて保存していました。

ペットボトルに水を溜めている様子


北川さん

あと、カメルーンの人たちはみんなおしゃれで、村のイベントには作った洋服を着て、お揃いの服でたのしんでいたりしました。

また、「ビール」をすごく飲む人たちなので、カメルーンで盛んなサッカーをやっている最中や仕事の合間だろうが、お構いなしに飲んでいます。

そして独特だなと思ったのが「常温のビール」をすごい好んで飲んでいることです。

停電して冷やせない、というのももちろんあるのですが、「冷えたビールを飲むとお腹を壊しちゃうから健康によくない」ってカメルーンの人に言われました(笑)

カメルーンの人々の暮らしの様子

子供達の創造性を育む!北川さんのアイデアとは。

北川さん:
私は村の保育事務所に配属されて村にある4つの公立幼稚園を巡回して、先生たちのスキルアップを目指して活動しました。

子どもたちは1クラス大体60人以上います。それに対して指導をメインにする先生は1人だけ。そうなってくると60人の子どもたちを指導することが難しくて。

1クラスにたくさんの子どもたち

北川さん:
既存のカリキュラムの中ではワークブックを使った「文字の書き取り」や「塗り絵」をやっています。子どもたちは言われたことをただ作業としてやっているだけなので、本当に身についているのかがいつも疑問でした。

例えばワークブックのノートが逆さまになっていても全然気にしない子もいたり。

塗り絵も子どもたちが色を選ぶのではなく先生が選んだ色で塗るだけ。じゃあ、子どもたちに「これは何色?」と聞いてもその色が答えられなかったり。

せっかく塗り絵をしているのにその活動が全然意味をなしていないのでは?と思いました。

ワークブックが逆さまの状態で塗り絵をする子どもたち

北川さん:
そこで私は、子どもたちに好きな色で塗ってもらうというオリジナルの塗り絵を用意しました。最初は何色を使えばいいのか、どこを塗ったらいいのか戸惑っていましたがその中で才能を発揮する子も出てくるんですよ。

その子の作品を見て先生が一緒に褒めてくれたり、褒められた子を見て他の子どもたちも積極的に参加する変化が見られるようになりました。

そのなかで自主的に課題に取り組むサイクルが生まれて創造性を育み、先生と子どもに良い変化が起きる。それを見ていると自分もうれしく思いました。

個性あふれるこどもたちの塗り絵

カメルーンで学んだみんなに伝えたい2つのコトバ

北川さん:
1つは「当たり前は人の数だけ存在する」ということ。自分では当たり前に思っていることも、身近な人にとっては当たり前が違うことが多くあります。

日本では当たり前のように毎日きれいな水が出てきて、電気も24時間絶えず使うことができる。でもカメルーンではそうではありません。

それは人間にも言えることで、自分の「友人、家族、恋人」であっても、自分と考えが同じことはなく、人の数だけ当たり前が存在します。

国籍や宗教が違えど、「どちらが良い・どちらが悪い」ではなくそれぞれの価値観を尊重して知り合ったり、受け入れる気持ちが生きていく上で大切なんだなと感じました。

北川さん:
2つ目は「1人じゃないってこと」です。
カメルーンに滞在中、村で1人でいる時に意地悪をしてくる人も中にはいました。

ただ、そこには助けに来てくれる人もいて、生活で困っていることはご近所さんに助けられたり幼稚園で困ったことがあっても先生や子どもたちに助けられたこともあります。

困ったことがあったら「SOSをしっかりと声に出す」ということが大切だなと思いました。

「私も助けてもらうだけでなく助ける側の人間になりたい」と思って、それがカメルーンでの活動の原動力になりました。

最後に海士町に帰ってきて伝えたいメッセージなどはありますか?

北川さん:

帰国してからもこうやって帰って来れる場所があるってすごい安心できるしうれしいことなので、こういう繋がりを私自身も大切にして行きたいです。

これからもグローカルプログラム生がいっぱい来ると思いますが、海士町のみなさんであたたかく迎えていただけるとうれしいなと思います。



カメルーンの子どもたちにたくさんの笑顔を届けた北川奈々さん
彼女もまた、様々な人たちの笑顔に支えられているのでした。

(海士町note担当:神津・渋谷)


島との距離は離れても、気持ちはいつも近くに