自分の夢を叶えられるイベント「月と太陽のマルシェ」
2023年3月12日、Entôにて「月と太陽のマルシェ」というイベントが開催され、約200名のお客さんに来場していただきました。
このマルシェは、1つの場所に集まって、たくさんの人と関わりながら、自分らしく生きることのできる居場所をつくりたい、「ここに住んでよかった!」と思える場をみんなで作り上げたい、という主催者の想いとみなさんの共創によって成り立っています。
このイベントは、海士町在住の宇野幸枝さんを中心に、河内明子さん、田中早百合さん、宇野祐子さんが、いろんな人に声をかけて開催されたとのことで、当日は全20店舗の出店があったそう。
出店者のみなさんは、自身の経験から、食や健康の大切さを伝えたいと勇気を出して踏み出してくださいました。
「月」(休む)と「太陽」(頑張る)がともに共存し、1人1人が自分でバランスをとりながら調和できるように、との願いを込めて、『月と太陽のマルシェ』というイベント名になったそうで、男性・女性問わず、1人の人として月のように輝いたら良い、1人1人のカラーを大事にしながら一緒にやるという意味も込められています。
マルシェのコンセプトは、自分のカラーを出すことで、自分らしく生きられる居場所をつくること。出店者として出店したり、お客さんとして遊びに来たりすることでそれが輝き、元気になっていただけたらという思いで開催したそうです。
気軽に自分のやりたいことができる居場所をつくるために
「月と太陽のマルシェ」は、イベントの主催者・宇野幸枝さんと河内明子さんにとってはじめての試みとのことで、なぜこのようなイベントを開催しようと思ったのか、どんなことを大切にしながら開催していたのかなど、島体験生として総務課に所属している私が、お2人にお話しをお聞きしました。
宇野さん・河内さん:「マルシェをしようと考えたきっかけは、ワイン友達4人のうちの1人が、海士町で毎月開催されている「まるどマーケットが楽しそう」と言っていたことでした。その友人はカフェなど何かお店を開くことに憧れていて・・・。やりたいことはあるけれど、1人で行動を起こすのって勇気がいることだし、なかなかできないことだなと感じているそうで、他人の目を気にしてしまったり、なおさら女性だといろいろな縛りによって押さえつけられて思うようにできなかったり。何かをやりたいという気持ちがある方々が気軽に自分のしたいことを実現しやすい環境をつくりたい。その最初のきっかけづくりをしたいと思い、今回イベントを1から企画し、開催しました。」
宇野さん:「イベントを企画する上で大切にしたことは、相手の意見を否定しないことです。出店者が「これやりたい」と言ってくださったら、特定のジャンルだけでなく、なんでも受け入れ、幅広いジャンルのブースを出せるマルシェにしたいと思っています。主催者だけでなく、1人1人がリーダーシップを図ることができ、さらに自立できる居場所づくりをしたいと考えています。自分のやりたいことを自由にやることで、その人の魅力を引き出し、自分を再発見することにつながるのではないかと考えました」
河内さん:「実は、このイベントに遊びに来てくださったお客さんの中に、やりたいことが決まった人がいるんです。「あの人がやるなら私もやりたい!」っていうように、そういう人がもっと増えて、最終目標である「島」の活性化につながるとうれしいなぁと思っています」
自分の再発見につなげる、そして、最終的には「島」の活性化。ただ単に、楽しいイベントを開催するだけでなく、イベントを企画する意味や「島」の将来をしっかりと考え、常に目的意識をもって行動することって大事ですよね。
宇野さん:「海士町で何十年も生活をしていて、誰かのために生きている人が多いと感じました。こうした自分たちで作り上げるイベントを通じて、誰かのためにっていう固定観念を払拭したい。私たちが海士町で感じた経験から、性別、年齢関係なく、自分のために生きて良いんだよってことを伝えたいです」
宇野さん:「あの日、1人の男性のお客さんが「甘酒おいしかったです」と言ってくださったと、出店者の方からお聞きしました。それがすごく印象的で、今でも覚えています。甘酒って美容、健康に良いので、女性に好まれるイメージがあったようですが、女性に限らず、男性にも響くのだなと気づくことができました」
一緒に何かに挑戦できる環境
見に来てくださったお客さんからギターの演奏者へ曲のリクエストもあり、終始楽しく、充実した時間を過ごすことができたそう。
宇野さん:「島留学生との交流の場にもなり、地元の人だけでなく、いろいろな年代の方に楽しんでいただけたようで良かったです。海士町は地元の方と移住者された方が分かれてしまうときがあるなと感じていましたが、今回のイベントで、多くの人と交流でき、移住者や地元の方関係なく、一緒に何かにチャレンジできる環境があることって大切なんだなと思いました」
イベントを通じて感じた気づきを教えてください。
宇野さん:「仕事を任せることの大切さです。私は人に仕事を振ることが苦手で、全部自分でやってしまいがちなんです。でもそうすると後継者は育たないんだなと気づきました。今回、島留学生4名が「お手伝いしたいです」と率先して言ってくださり、本当に感謝しています。イベント後に彼らに感想を聞いてみたところ、「楽しかったです!」と言ってくれてうれしかったなぁ。ボランティアなのに、そういうことを言ってくれて、素直に若い方ってすごいなと思いました。楽しみながらやることの大切さにも気づかされました。イベントを通じて、私も島留学生と関わることができ、よかったです。
また、私は美容関係に興味があるんですけど、ヨガやネイルなどいわゆる癒し系です。島ってそういう美容の場が少ないなと思いました。次回企画するときは、1人1人に対して何があったら良いか、前もって情報をきちんとリサーチして、いつか島まるごとヨガスタジオもしたいなぁと思っています。そのときも、もちろん私が主催者となって開催します!」
なるほど。楽しみながら何かをやるって人生において大切なことですね。そして、島まるごとヨガスタジオ、気になります!
河内さんは、イベントの中でよかったことはありましたか。
河内さん:「帰り際、どの人も笑顔になって、「楽しかったです」と帰ってくれたことがよかったことかな。私も印象に残っている出来事があって。私たちから「今度、こういうイベントやるよ」って声をかけたら、マルシェのために島に帰ってきてくれた方がいらっしゃいました。その方は結婚を機に島を出ていき、本土で生活をしているのですが、普段なかなか会えない人ともこうやって再会できたことはうれしかったですね。それと、当日、お客さんにサラダを提供したんです。作ることができる人が率先して手を挙げ、作りました。食べてくださった方は「おいしい」って言いながら食べてくれて、笑顔になってくれたのがよかったなと思っています」
それはすごくうれしいですね!島に行きたくても何かきっかけがないと行けないっていう人もいると思うので、「月と太陽のマルシェ」がそのきっかけづくりになったのだなと思いました。
主催者からメッセージ
宇野さん・河内さん:「先日のマルシェにご来場いただいた皆様、ありがとうございました。イベントの企画から開催まで行ったのははじめてで不安もありましたが、無事終えることでき、よかったです。
今回の代表者は、私、宇野が務めましたが、「こういうことをやりたい!」と声を上げた人が代表になったほうが良いんじゃないかと考えています。そこに賛同してくれる人が周りに集まってくるので。ぜひ、自分の好きを認めて勇気を出して、一歩踏み出してほしいと思っています。
「月と太陽のマルシェ」を通じて、やりたいこと、やるべきことがより明確になった気がします。今後は島の女性のみなさんを中心に、島の資源を活用した「月と太陽 商品開発部」も発足していきたいと思っていますし、今のところ、今回のマルシェで終わらせる予定はありません。
私たちのイベントは、隠岐島前・島後地域の「島」の活性化につなげることを目的としているため、会場は島前に限らず、島後での開催も考えています。次回は、どこで行われ、そこにはどんなブースがでるのか、楽しみに待っていてくださいね。」
宇野幸枝さん
西ノ島町出身。島前高校を18歳のとき卒業してからすぐに関西にある会社に就職。20歳のときに松江市に引っ越しをしましたが、その後旦那さんと知り合い、結婚を機に隠岐へUターンをしたそう。27歳のとき、調理師の旦那さんと一緒に、菱浦地区にある飲食店「味蔵」を開業し、昨年20周年を迎えた。
河内明子さん
宇野さんとは姉妹で、同じく西ノ島町出身。現在は海士町在住。18歳で島前高校を卒業したあとは、大阪の短期大学へ進学。卒業後は銀行へ入行。30代で隠岐へUターンし、20年以上勤めた銀行を退職。その後、起業して、現在は子育て支援関連の事業を展開しているとのこと。
書き手より
主催者のお二人は、島を出ていくとき、「もともと戻ってくる気はなかった」ともお話していました。けれど、いろいろなタイミングが重なって、イベントの開催に至ったのは、とても素敵なことだなと思います。
取材をしているとき、途中笑い声が絶えず、楽しそうにお話してくださった宇野さんと河内さん。とても仲の良い姉妹なのだなという印象を受けました。イベントが盛況だった秘訣の一つは、お二人の仲の良さからうまれる団結力なのではないでしょうか。多くの人と協力しながら島を盛り上げていこうという信念と団結力が、はじめてのイベントを成功させる鍵になっているのではないかと思いました。
(文:総務課所属 島体験生)