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みんなの「ないものはない」ストーリー

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We have nothing? / We have everything? 「ないものはない」的だ!と感じたエピソードをまとめています。
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#旅

隠岐・海士町。「ないものはない」島のゆたかな時間

島に来た。 本土からフェリーで三時間。船酔い防止に寝そべった二等船室の床は硬くて、ゴゴゴというエンジンの振動が尾てい骨を伝って身体中に響く。今日は海がしけらしく、揺れる。フェルトを固めたみたいなグレーのカーペットに、汚れを気にする暇もなく転がって時間が過ぎるのを待っていた。 民謡のような音で起こされると、やっと菱浦港のアナウンスが流れている。船着場は、木でできた可愛らしい建物だった。どうやらここは観光案内所や土産屋、地元の食材売り場まで揃った施設らしい。 私が訪れたのは

ないものはないからこそ

わたしは少し前に、島根県の隠岐諸島のひとつの島、海士町(あまちょう)というまちに1週間ほど滞在していた。本土からフェリーで3時間、東京からは移動に半日かかる離島だ。 海士町に行って、というか、東京に帰ってきて一番感じたことは、いろんなものがないからこその、生活だった。 海士町から帰って最初の休みの日、特に予定がなかったので、なにがしたいかなぁと思ったときに、頭に浮かんだのが「釣り」だった。 島にいる間に2回、島のひとに釣りに連れて行ってもらった。人生でほぼ初めての釣りだ