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みんなの「ないものはない」ストーリー

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We have nothing? / We have everything? 「ないものはない」的だ!と感じたエピソードをまとめています。
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#エッセイ

隠岐・海士町。「ないものはない」島のゆたかな時間

島に来た。 本土からフェリーで三時間。船酔い防止に寝そべった二等船室の床は硬くて、ゴゴゴというエンジンの振動が尾てい骨を伝って身体中に響く。今日は海がしけらしく、揺れる。フェルトを固めたみたいなグレーのカーペットに、汚れを気にする暇もなく転がって時間が過ぎるのを待っていた。 民謡のような音で起こされると、やっと菱浦港のアナウンスが流れている。船着場は、木でできた可愛らしい建物だった。どうやらここは観光案内所や土産屋、地元の食材売り場まで揃った施設らしい。 私が訪れたのは

人を選りすぐるマインドと、人を活かし切るマインド

組織における人の重要性は昔も今も変わらず、むしろクリエイティブが求められるいまの時代は、さらに声高に叫ばれる。 昨今の人材獲得競争がその典型である。事業を成功させるためには、いかにいい人材を集めるか。人材の質が事業の成功確率を高めることから、とりわけスタートアップでは人材をめぐる競争が激しい。 大企業にも同じような構図がある。自分の部署に優秀な社員を獲得したいという願望が溢れ、「できる社員」はどこの部署からも欲しがられる。一方で、戦力にならないと烙印を押された社員は「使え

ないものはないからこそ

わたしは少し前に、島根県の隠岐諸島のひとつの島、海士町(あまちょう)というまちに1週間ほど滞在していた。本土からフェリーで3時間、東京からは移動に半日かかる離島だ。 海士町に行って、というか、東京に帰ってきて一番感じたことは、いろんなものがないからこその、生活だった。 海士町から帰って最初の休みの日、特に予定がなかったので、なにがしたいかなぁと思ったときに、頭に浮かんだのが「釣り」だった。 島にいる間に2回、島のひとに釣りに連れて行ってもらった。人生でほぼ初めての釣りだ

「空気」をつくれるか(原田英治)

連載:離島から会社を経営する 創業20年目の節目に、生活の拠点を島根県・海士町に移した著者。地方創生の先進地として知られ、全国から大勢の人が訪れる海士町での暮らしは、経営者としての思考や価値観にどんな影響をもたらすのか。1年にわたる島暮らしでの気づきを綴る。 海士町に夏が訪れた。食卓には、近所からいただく美味しい夏野菜に、アワビやサザエがならぶ。子供たちは高石漁港の一番高い堤防から勇気試しに、思い思いのポーズで水面に飛び込んでいく。 宇受賀命神社の大祭では神輿を担いだ。伝