海士町のみなさんと、職人とつくるこだわりの家具〜新庁舎リメイク家具ストーリー〜
2024年11月に新しくなった海士町役場。その空間を彩っているのがユニークな家具たち。海士町役場新庁舎魅力化プロジェクトのリメイク家具チームによって生まれ変わったリメイク家具にまつわるエピソードをご紹介します。
今回は、主にワークショップで海士町の皆さんの手が加わって完成した家具をまとめてご紹介します!
ワークショップで家具をつくりました
海士町役場新庁舎魅力化プロジェクトでは、2024年7月と9月に、広く海士町のみなさんを対象とした家具リメイクのワークショップを行いました。家族連れの方や木工が趣味の方など、様々な皆さんに全5日程で延べ60名以上ご参加いただきました。
ものづくりをしたことのない人でも、職人の指導のもと楽しく安全に作業を進めることができました。
ワークショップの詳しい様子や工程は、こちらの記事でチェックできます。
また2024年7月には、島内の職人やものづくりの経験がある人向けに、家具職人と一緒に専門的な作業を行う機会も設けられました。
本記事では、これらのワークショップの機会に、町民の手が加わって完成した家具を次々とご紹介します!
あま丸ホテルチェア・地層チェア
まずは、7月のワークショップで作った椅子です。
2種類とも「しゃばりば(新しい役場1階共創スペース)」にたくさん設置してあります。
長らく役場の大会議室で使われていた、30年ものの椅子です。
リメイクしなければ、大量の産業廃棄物となり処理にお金や労力をたくさん費やすところでしたが、今回は海士町のみなさんと楽しく生まれ変わらせることができました。
ワークショップでの作業の様子は、冒頭に引用した記事からチェックできます。ぜひご覧ください。
カキタイルテーブル
しゃばりばに入ると、チェックインカウンターの奥に見える、ひときわ大きなテーブル。海士町で取れた木材の天板と、町民向けワークショップの作品がかけ合わさりました。
まず、真ん中の白い部分は、岩牡蠣の殻を使ってつくったタイルです。9月のワークショップで制作しました。
木枠を作って、モルタル(セメント)を練って流し込み、砕いた牡蠣殻を好きなように埋め込みます。
そして、乾いてから表面を研磨すると、大理石のような模様が見えてくるのです!
岩牡蠣は海士町の特産物としてたくさんの方に楽しまれる一方、お店でまとめて出る大量の殻は、産業廃棄物として処理されます。
海士町らしい産物の、捨てるしかない殻の部分を活用して、素敵なアートが生まれました。
また、この大きなテーブルは、元々役場の議員控室で使われていたものです。リメイク作業のため部屋から運び出すのも一苦労。分解して少しずつお引越ししました。
天板は、温かみのある木の素材を重ねて据え付け。実はここで使われた木材は、北分地区で倒木したタブから切り出したものなんです。
どのように木材を使おう…?と考えた結果、小さくしてタイル状に敷き詰める形で、大きなテーブルの天板として活用することになりました。
既存家具×ワークショップの作品×島の倒木から取った木材。
思いのこもった大テーブルです。ぜひ実際に目で見て確かめてください。
副町長室のテーブルと椅子
ワークショップの牡蠣殻タイルは、副町長室でもテーブルに使われています。開発センターで余っていたテーブルの脚に、天板を取り付けました。
椅子も、キンニャモニャセンターで余っていたものを、研磨してオイルを塗り、あたたかみのあるテーブルセットとなりました。
待合ベンチ
こちらは、2階の待合エリアに設置される木のベンチです。ワークショップで手を加える前の、元々の姿は…
1つは開発センターで以前使われていたもの。もう1つは、ホテルの倉庫に眠っていたものでした。どうやってリメイクしようかな?と、座面を触ってみると、クッション部分が朽ちている状態。でも、フレームはまだ使えます。
みんなで力を合わせて、元のクッションの座面を剥がして、木の座面に張り替えました。
朽ちて捨てられる寸前のベンチも、海士町のみなさんの作業によって今後も長く使える姿に生まれ変わりました。
雑談室テーブル
しゃばりばから開発センターに抜ける道の途中にある雑談室。ここにも、ワークショップで生まれ変わった机と椅子が置いてあります。
椅子は、北分のログハウスからいただいたもの。そして机は、図書館前のスペースに置いてあったものです。経年劣化で、カップのシミや色あせた部分が所々にあり、まばらな状態でした。
これらを、専用の機械で研磨して、オイルで仕上げると
全く別の新品家具のように生まれ変わりました。ワークショップ参加者からも、この変化には驚きの声が上がります。
大掛かりで特殊な加工を加えなくても、少し削ればまた綺麗な面を見せてくれるのが木製家具の特徴です。
ミラクル桜テーブル
こちらは、島内職人の手でつくられたテーブルで、しゃばりばに設置してあります。4つの扇形テーブルが組み合わさって円形になっており、そのまま使っても分けて使っても便利な形状です。
このテーブルの最大の特徴は、天板の木材です。
飯古建設のリサイクルプラントからいただいた、水に浸かっていた大黒柱を使用しました。
朽ちている部分を削ってみると、サクラの木であることが判明。
大黒柱でサクラの木を使うことは珍しく、また、新しいサクラの木よりも深い色味が特徴的で、経年変化がよく分かる歴史深い家具となりました。
島前3島柱状節理テーブル
このテーブルは、見覚えのある人も多いのではないでしょうか。
港のキンニャモニャセンター1階に設置されているものと同じく、「島前3島」と「柱状節理」をイメージした組み合わせテーブルです。
三つの島をイメージしたテーブルのうち、「海士」のものには北分の楠の倒木から取った木材を、他の二つには島後の池田材木店から入手した木材が使われています。
家具に使う木材は、できる限り島前・島後の中で調達するべく、様々な方にご協力をいただきました。
また、「柱状節理」とは、地層のでき方の一つです。隠岐のジオパークのイメージを落とし込みました。
海士町のみなさんとつくる意味
ここまで、海士町のみなさんに関わっていただいて出来上がった家具を数多く紹介しました。
ワークショップに参加された方もそうでない方も、これらの家具が使われ続ける限り、見るたびに「あのころみんなで作った家具だ!」「島にある不要なものが生まれ変わった姿なんだな」と実感を持って思っていただけたら嬉しいです。
そして、家具への愛着が場所への愛着に、しゃばりばがみなさんに愛され、気軽に集える場所になることを願っています。