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パパアンバサダー、海士愛を語る。2回の来島で手にした「ワクワクする未来」への手がかり【海士町アンバサダー】

2024年5月よりスタートした『海士町オフィシャルアンバサダー制度』。海士町が大好きでその魅力をたくさんの人に知ってもらいたい。町作りに貢献したい、関わりたい、応援したい......。そんな方にぴったりの制度です。

毎回異なるアンバサダーにお話いただく本企画。今回登場していただいたのは、ご自身に加え、家族全員でアンバサダーになられた西岡 康さんです。

「海士、好きですね」。取材の終わり際、噛み締めるようにそう口にした西岡さん。家族でアンバサダーになった経緯や海士町で得たこと、自身を惹きつけてやまない町の魅力について伺いました。



今回お話を聞いた人

西岡 康さん
埼玉県在住。妻と子どもの4人家族。サントリーホールディングスの労働組合(THE SUNTORY UN!ON)で本部専従として勤務しています。仕事で海士を訪れたことをきっかけに海士の虜となり、その数ヵ月後に今度は家族と再訪。アンバサダーとして町内外のイベントに家族で参加したり、発信をしたりと積極的に活動しています。

「海士は僕にとってとびきりの非日常空間。今年も家族で行きたいと思っています。みんなでサザエを採ってみたいね、とか海士のお友達とまたビーチで遊びたいね、と話しているんです。」




「人生観が変わった」海士での印象的な出会い。家族みんなでアンバサダーになって


── 西岡さんはご家族皆さんでアンバサダーに参加されているそうですね。ご家族も海士町へ行かれたことはあるんですか?

西岡さん:
昨年(2024年)9月に妻と子どもたちと一緒に海士を訪れました。僕以外の3人は初めての海士でしたが、僕はその数ヵ月前に訪れていたので2回目の来島でした。

滞在中は島の人たちと交流したり、海で思い切り遊んだり。濃厚な3日間でしたね。みんなとても楽しかったようで「今年も行きたいね。今年はおじいちゃん、おばあちゃんも誘ってみようか」と話しているんです。


── それは良いですね! 西岡さんご自身は2回目だったとのことですが、そもそも海士町との出会いは何がきっかけだったんでしょう。

西岡さん:
きっかけは仕事ですね。

僕が勤務するのは、サントリーホールディングスの労働組合本部。そこで組合員向けの研修を企画運営しているのですが、その研修地のひとつが海士町だったんです。

海士での研修は『海士五感塾』と呼ばれていて、島の人たちとの対話や産業体験を通して自己内省を深めていくプログラム。その海士五感塾に主催者側として参加しました。

海士五感塾について:
『五感塾』とは、いすゞ自動車で企業人教育に長年携わった北村三郎氏が提唱する、地域との繋がりを通して「人間力」の向上を目指す研修のこと。全国各地で行われている取り組みで、THE SUNTORY UN!ONでは2011年から海士町で『海士五感塾』を開催。毎年10名前後の組合員が研修に参加しています。

海士五感塾のことは参加した先輩から「人生観が変わるよ」と聞かされていたので、行かせてもらえると知った時はうれしかったですね。


── 実際に海士五感塾に参加してみて、どうでしたか?

西岡さん:
海士五感塾では、ふくぎ茶づくりや山道整備といった産業体験に加え、町民や島留学生、移住者など、たくさんの島の方々とお話をする機会がありました。

山道整備での一枚。「道なき道を切り開いていきました」

体験や交流をした後は、自分自身と向き合って内省を深める時間を設けるようにしています。たとえば島留学生から「どういう思いで島留学に参加する選択をしたのか」という話を聞き、どんなことを学んだのか、その学びを自分はどう生かすことができるかを考えるんです。体験・対話と自己内省を繰り返し、「自分とは何か」を徹底的に考える3日間でした。


その中で、非常に印象的な出来事があって。それが、移住者の小島 めぐみさんとの出会いです。後から思ったことではありますが、この出会いを通してあの時の「人生観が変わる」という言葉は本当だったなと感じました。

小島さんは元々町づくりや地域の観光振興に興味があり、2022年に東京から海士町に移住された方です。「海士があまりに良いから」と当時4歳になるお子さんと2人で移住されたそうで、その意思決定ができる力強さを「すごい」と思うと同時に、同じくらいの年の子どもを育てる親として興味を引かれました。

話を詳しく伺ってみたら、「旦那は地方の生活が合わなそうだったので、東京と海士、別々に住んでみたんです」って。「そんな家族のかたちがあるんだ!」と目から鱗が落ちましたね。


何より、小島さんのお子さんがのびのびと育っている様子を感じたり、保育園や小学校の話を聞いて「ここに家族を連れてきたい。自分の子が島の子供たちと交流したら、どんな化学反応が起きるだろう?」と思ったんです。以前から夫婦で地方での子育てに関心を持っていましたし、「家族で海士に滞在したらどうなるだろう」と試してみたい気持ちもあって。

それで「またぜひお会いしたいので」と、小島さんと連絡先を交換したんです。


── そんな素敵な出会いがあったんですね!

西岡さん:
その後しばらくして、小島さんからアンバサダー制度のことを教えてもらいました。ふるさと納税を使って参加することができましたし、「面白そうだな」と気軽な気持ちで申し込んだんです。

そうしたら、小島さんから参加のお礼と一緒に今度は「海士町アンバサダーに"ファミリーアンバサダー"ができるんです」とオススメされて(笑)。家族3人分でもそこまで大きな金額ではないし、受けられる特典が魅力的だったのでみんなで入ることにしたんです。ちなみに娘は当時2歳で、最年少アンバサダーになりました。

そんな感じでトントン拍子で家族全員アンバサダーとなり、いざ海士町を訪れることにしたんです。


訪れたのはちょうど還流フェス2024の開催期間。せっかくだからとほぼその行程に合わせる形で、3日間町民や島留学生、アンバサダーの方々と交流会やイベントに参加しました。

ただ最終日だけ、来島の目的のひとつだった小島さん親子に会いに行くことにしたんです。

ビーチで子どもたちを自由に遊ばせながら奥さんと小島さんがお喋りをしていて、僕はそれを眺めている。「このために来たんやな」と思えるくらい良い時間でした。

「海士で撮った写真の中で、一番のお気に入りです」と西岡さん。


奥さんも小島さんと会い、生き方に触れて「移住もひとつの選択肢としてあるよね」と面白がってくれたり、子どもたちも島の子たちと一瞬で仲良くなって「また行きたい」と言ってくれたり。たった2回の来島ですが、1回1回のインパクトが強く、得たものがたくさんあるなと感じています。


いろいろな生き方や選択肢がある。2回の来島で海士が教えてくれたこと


── 話を聞いていると、来島2回目とは思えないほどの熱量を感じました。西岡さんをそこまでさせる海士の一番の魅力とは、一体何なのでしょうか?

西岡さん:
僕もよく考えるんですが、結局”人”だと思います。小島さんはじめ、お会いしてきた皆さんとても魅力的な方々なんです。

海士は言ってしまえば、交通アクセスの悪い辺鄙な土地。そこへ他の土地から移り住み、わざわざ暮らすという選択をしているのにはそれなりの理由があり、それぞれの思いがある。たとえば、海士を知ってもらいたいとか、良くしたいとか、海士の何かに特別な思いを寄せているとか。

そうやって自分ではなかなか踏み切れない移住を決断しているアクティブな人たちや、自分とは違う生き方をしている島留学生の子たちを「すごいな」と思いますし、単純に羨ましくもあります。


僕が羨ましいと思った分、奥さんや子どもたちにも「移住」という選択肢があることや、世の中にはいろいろな生き方があることを知ってほしかった。2回目の家族との来島には僕自身のそんな思いが隠れていたのかもしれません。


── そうだったんですね。実際にご家族で海士町を訪れてから変わったことはありましたか?

西岡さん:
小島さんから『海士町親子島留学の話を聞いて、「将来の選択肢のひとつとして考えるのも良いかもな」と思うようになりました。

具体的に何かを決断したというわけではないのですが、海士を訪れてから子どもの育て方や暮らす場所について奥さんと話題にすることが増えました。これからの生き方を考える良いきっかけになったと思います。

実は、僕たち夫婦には将来それぞれやりたいことがあって。奥さんは託児所つきのカフェを、僕は居酒屋を営むのが夢なんです。「海士で昼はカフェ、夜は居酒屋のお店を開くのも楽しそうだよね」なんていう話を最近二人でしていました。

西岡さんご家族。宿泊したEntoにて。


広がる人脈。アンバサダーとはつまり、海士の「推し活仲間」 


── もし良ければ、海士町で出会った「人」についてのお話をもう少し伺いたいです!

西岡さん:
もちろんです! そうですね……。島留学生だと、乙川 翔太郎くんです。彼は市場に出荷されない「未利用魚」の有効活用を目指して仲間と一緒に活動しているのですが、元々は海士五感塾の際にお会いしたのですが、還流フェスの際にも再会して、やる気やパワーが溢れる子だったので仲良くなりました。

今でも時々連絡を取っていて、ちょうど僕の学生時代の後輩で乙川くんたちの取り組みと親和性の高そうな事業を行う知り合いがいたので、乙川くんと繋ごうとしているところです。

乙川くんと西岡さんのツーショット。還流フェスの交流会にて。


アンバサダーの方では、桑原さんですね。日本橋で行われた『スナックあまのわ』でお会いしました。桑原さんは日本各地で地方創生のお仕事をされているので、他自治体のことにも詳しくて。後日、桑原さんに北海道の上川町という自治体を紹介していただいたんです。

以降、上川町の担当者とやり取りを重ね、実は今、今夏に「上川五感塾」を立ち上げようと話が進んでいるんですよ。


── アンバサダーの人脈が見事に仕事へ生かされていますね!

西岡さん:
そうですね。アンバサダーになって圧倒的に人脈が広がりました。それもただの人脈ではなくて「海士」の推し活仲間ができたような感覚です。

好きなものを同じように好きな人たちが集まっている場って、居心地が良いじゃないですか。

海士を好きな人はたくさんいるけど、その中でもわざわざアンバサダーになっている人たちなので。皆さん職業も年齢もバラバラだけど、価値観が近く話していてとても楽しいんです。


── 「推し活仲間」って、良いですね。ちなみに、アンバサダー活動として何かやっていることはありますか?

西岡さん:
冒頭でお話した海士五感塾はかれこれ10年以上続く取り組みで、これまで100人以上の社員が海士を訪れました。そんな海士の経験者が参加するコミュニティがあるのですが、その中でアンバサダー制度を紹介したり、還流フェスの参加レポートを投稿したりと情報発信をしています。

皆さん海士を一度経験したことのある人たちなので、心の底では「また行きたいな」と感じていると思うんです。でも実際に行くのは中々難しい。そんな中、僕が海士の近況を共有することで、海士を思い出す・もう一度足を運ぶきっかけになったらうれしいなと思っています。


海士で見つけた、心の琴線に触れる風景

 

── 視点を変えて、海士町のお気に入りの場所について教えてください。

西岡さん:
『諏訪湾』です。朝一番に行ってみたら、凪になっていて本当に静かで。気持ち良くて、海を眺めながらひとりで1時間くらいボーッとしていました。贅沢な時間でしたね。

諏訪湾。宿泊先の『なかむら旅館』から歩いて向かった先に広がっていたそう。


後は、普通にそこらへんに牛がいる風景にも惹かれました。山の上へ行くと、時々牛が道路をふさいでいて通れないことがあったりして(笑)。「海士良いなあ」としみじみ思った瞬間でしたね。


── ふとした瞬間まで楽しんでいらっしゃる……。西岡さんの魂が「海士町」という土地と調和しているような感じがします。



価値観や感覚が自分にフィットする場所。そんな海士と、もっともっと関わっていきたい


── お話を聞いていると、言葉の端々から海士町への思いやエネルギーが伝わってきます! 本当に海士町がお好きなんですね。

西岡さん:
きっと、それだけ2回の来島で得たものや受けた刺激が大きかったんでしょうね。アンバサダーの活動や発信を積極的に行っているのも、「海士で体験したことを色濃く覚えていたい」という気持ちからなんです。

もちろん「海士のために何かしたい」という思いもあります。乙川くんと知り合いを繋げることを思いついた時は、「面白いことができるんちゃうか」とワクワクしました。

……うん、そうですね。海士、好きですね(笑)。


海士を訪れ、たくさんの人と出会って。そこで触れた価値観や感覚が自分にピタリとはまった。僕にとって、海士は自分自身の原点に立ち返ることのできる場所。できれば定期的に足を運びたいです。

アンバサダーとしても「推し活仲間」同士、海士について語り合ったり、一緒に訪れたり。そうやって交流を深めながら仕事にも結びつけていけたら面白いですよね。

何だか、海士を起点にワクワクする未来がたくさん作られているようです。


── 本当に。楽しみですね! 今後海士町との関わりがまた一段深くなった際には、ぜひお話を聞かせていただきたいです。

西岡さん:
ぜひぜひ。きっと僕も話したいことがたくさんあると思うので!

取材中、西岡さんのパソコンを見ると「海士愛」が伝わるアイテムが。「ステッカー良いでしょう!島の方に頼んで買ってきてもらったんです」


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