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ナマコ事業をきっかけに持続可能な漁業に切り替えていく


令和3年度、海士町未来共創基金では2つの事業が採択されました。なまこ漁師会さんの「ナマコとともに生きていく(ナマコ資源増殖支援事業 以下、ナマコ事業)」と宇野さんの「海が好きになるマリンボート事業」です。

事業を提案された宮﨑さんと、事業を伴走者としてサポートする山下さんに、ナマコ事業を行うきっかけや経緯についてお聞きしました。

海士町未来共創基金(運営:海士町未来投資委員会)とは、島の未来につながる事業への投資・共創を行うため、2020年12月に設置された基金です。日本全国のみなさんから応援いただいた海士町へのふるさと納税(年間全納付額の25〜30%程度)を活用し、新たな挑戦を支援します。

▼ 設立の経緯や基金についてはこちら


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ナマコが減少している危機感があった

3年ほど前から海士町近海でナマコが減少している現状を山下さんと話していたという宮﨑さん。どうすれば海士町に合ったナマコの増やし方ができるのか考えていたところ、未来共創基金の話をお聞きしたそうです。

「島外から稚ナマコを購入するのではなく、海士町周辺に自然に発生する稚ナマコを増やせる可能性があるのであれば、種をとって、育成して、ナマコが自然に増えていくのを助ける形が1番最適だなと思っていました。」(宮﨑さん)

加工場から見える海

サザエでもアワビでもなく、ナマコに焦点を当てたのは、ナマコがほかの漁業資源と大きく違いがあったからです。それは、約15年間でナマコの値段が3〜4倍に跳ね上がっているということ。

「漁業資源全体を見ても、このような資源は、他にあまり例がありません。同じ量を捕れれば3〜4倍に収入が増えることになります。(実際は捕れる量が減っているので、そうはならないのですが。)

また、ナマコはすでに香港に輸出するルートが確立できているので、価格変動リスクが少なく、安定した漁獲ができれば安定した収入につながるのではないかと思っています。」(宮﨑さん)

アワビもサザエも同様に、捕れる量が減ってきているのも現状です。海の資源自体が減ってきているのだそう。

だからこそ宮﨑さんは、値段が上がっていて、輸出ルートが確立しているナマコに焦点を当てました。


海を豊かにするためにナマコや海藻を増やしたい


ナマコを増やすことができれば、安定した収入につながることに加え、海士町の海を守ることにもつながるとナマコ事業伴走者の山下さんは言います。

「海を豊かにするために最初にできることは、ナマコや海藻を増やしていくこと。時間はかかるからこそ、今からしていかないといけないと感じています。

回遊している魚は、いつか海士町以外の誰かが獲っていってしまう。でも、根魚や海藻など海の資源を豊かにしてくれるものは、自分たちで力を入れていかないと枯渇してしまいます。それが回って、生活する人間にも関わっていく大きな問題につながってきます。」(山下さん)

左(PC):山下さん 右:宮﨑さん  ナマコ加工場にて打ち合わせ

ナマコは海の掃除屋とも言われており、海底の稚積物を食べて分解しています。ナマコを増やすことで、生態系豊かな海の環境を少しでも長く維持することにつながっていきます。

ナマコ事業をきっかけに海士町本来から生息する生き物を守りながら、自然と共存する姿を維持していきたいと宮﨑さんは話していました。


ナマコ事業でほかの漁業資源についても目を向けるきっかけに


海士町未来共創基金は、ふるさと納税を原資として事業に投資をしています。宮﨑さんは、「漁師さんが主体的に自分たちで考えて行動していく体制をつくりたい。」そのような想いも込めて、行政としての取り組みではない、海士町未来共創基金に応募したそうです。 

「行政主体ではなく、この事業を漁師さんたちで考えていくことが大事だと思っています。 自分たちで漁獲量を制限しよう!などの意見を出して、どうすればナマコが守れるのか・ナマコが増えるのか、を一緒に考えていきたいですね。

『ナマコの減少』について考えると、根魚やアカミズ、オコゼの漁獲量が適量なのかも大事になってきます。そうして、ナマコだけでなく、ほかの漁業資源についても目を向けるきっかけにしていきたいですね。」(山下さん)

ナマコを釜茹でしている様子

ほかのナマコ漁師さんにも、これからの活動を知ってもらって、一緒にやっていくことを大事にしたい。

今回の取り組みが実際に効果はどのくらいあるかわかりませんが、何もしないよりは何かをして、次の手が打てるようになるその第一歩だと考えているそうです。

宮﨑さんは、「ほかの漁師さんにも、自分たちで自分たちの資源を守っていく意識をより高めてもらうことを大事にしたい。ナマコ事業をきっかけに、資源管理を視野に入れてほしいと思っています。

なまこの育成、放流を通じて、今までの捕るだけだった漁業から、資源管理をしながら捕っていく。将来にわたって持続可能な漁業に切り替えていくことを目指しています。」と話していました。


新しい視点が大事


未来共創基金は申請者をサポートする伴走者・アドバイザーのみなさんがいることもポイント。多角的な視点で事業のあるべき姿を一緒に考え、サポートしてくださいます。 

このサポート体制は宮﨑さんにとって、とてもうれしかったそうです。話が進みやすく、サポートがあったおかげでここまで形にできたと話していました。

「アドバイザーの方からは、客観的な目線での意見をたくさんいただきました。私たち島内の目線からでは、気づきにくいことを意見してくださり、私たちと見え方が違うアドバイザーの方はとても貴重な存在でした。」(山下さん)


 
ナマコ事業があることをみなさんに知っていただきたい

最後に、宮﨑さんと山下さんにこれから期待していることについてお聞きしました。

「ナマコが増えることも大事ですが、ナマコ漁があることを島民のみなさんに知ってもらって、やってみようと興味を持ってくれる人が増えるとうれしいですね。

捕れる量が増えても、捕る人が増えないと産業が成り立たない。この事業をきっかけにみなさんに知っていただくことを期待しています。」(宮﨑さん)

「ただ増やすだけではなく、ふるさと納税などにも提供できるように、様々なモノゴトと連携しながら、楽しく事業を作っていきたいです。」(山下さん)

ふるさと納税のほかにも、ナマコが美容に良いという観点から、ナマコを加工するときのゆで汁を利用し、ナマコ風呂なども提供できればおもしろいと考えているそう。お化粧のノリも違うとか。

またナマコを食べることで、膝の痛みに効いたという話も聞いたことがあるので、海士町以外の人にも食べてもらうしかけも作っていきたいと山下さんは話していました。


これから

これからナマコ事業は、育成場を作り、小さいナマコを育てる環境を整えていきます。来年度からは、人工藻(人工的に海藻を模したもの)を海にいれ、ナマコの赤ちゃんが人工藻にくっついたところを採取し、成長を見届けていくそうです。

ナマコが孵化するまで
本来ナマコのたまごは、タンポポの綿毛のように、浮遊して潮に流れていきます。波や海藻などにぶつかり、沈んだところで孵化。稚なまこが育っていきます。

ナマコのたまごは、最初耳たぶのような形に。潮の流れを受けやすいようになっています。何日か経つと、ワインの樽のような形になって、海の抵抗を受けずに沈みやすくなります。沈んだあたりでナマコの形になっていくそう。

また、ナマコの専門家にも来ていただいて、「ナマコの育成場がどうなっていくのか」、「どういうことをすると育成に役立つのか」漁師さんたちに生態系の部分も知ってもらい、興味をもって一緒に育ててみたい仲間を増やしていく取り組みをしていくとのことです。

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宮﨑さん、山下さん、ありがとうございました。今年度採択されたナマコ事業とマリンボート事業。これから取り組みが進んでいくことが楽しみですね。活動の進捗など、今後もレポートしていきたいと思います!!

▶▶▶マリンボート事業もぜひご覧ください✨


【11/20土】チャレンジフォーラム

~未来へ繋ぐふるさと納税を使った新たな挑戦の報告会~

ふるさと納税と未来共創基金について、これまでの取り組みをまとめ、海士町の「いまとこれから目指す姿」をぜひ知っていただきたいことから、チャレンジフォーラムを開催します。

チャレンジフォーラムでは、「これからのふるさと納税とまちづくりの未来」と題したパネルディスカッションや、

実際に初年度投資事業として採択された2件のチャレンジャーや運営を行う理事らからも現在の取り組みや想いを語っていただきます。

このイベントはYouTube LIVEで配信しますので、海士町のこれからのまちづくりやふるさと納税の活用に興味・関心のある方はぜひご参加ください!

チャレンジフォーラムには、ふるさとチョイスを運営する川村憲一さんや、海士町長の大江和彦さんにご参加いただきます。

 

イベント詳細

日程
11月20日(土)15:30-18:30

場所
島根県隠岐郡海士町 島民ホール + オンライン配信(海士町産業文化祭内のイベントとして開催します。)

※島民ホールで現地参加をされる方は直接会場にお越しください。(現地参加については、事前申し込み不要)

参加費
無料

内容
①海士町のふるさと納税と海士町未来共創基金の紹介 
AMAホールディングス(株)松田昌大/ふるさと納税商品提供事業者

②2021年度海士町未来共創基金採択案件の紹介
・「ナマコとともに生きていく」
・「海が好きになるマリンボート事業」

③一般社団法人海士町未来投資委員会理事より 「未来共創基金の可能性」
 代表理事:竹本吉輝氏((株)トビムシ 代表取締役)
 理事:白井智子氏(特定非営利活動法⼈ 新公益連盟 代表理事)
 理事:枩山聡一郎氏((株)eumo取締役)

④パネルディスカッション「これからのふるさと納税とまちづくりの未来」
 パネラー:(株)トラストバンク代表取締役川村憲一氏/大江和彦海士町長
 モデレーター:AMAホールディングス(株)取締役 未来共創基金担当 青山敦士

※申込フォームはオンライン参加を希望される人向けのものです。

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