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これまで取り組んできたことを次の世代へ紡いでいくー半官半Xという働き方
2021年より、海士町役場に新しく発足した半官半X特命担当。
今回は、海士町役場独自の取り組みである半官半Xについて、まるごとご紹介していきます!
自分の「好き」や「得意」を地域に還元する
これまでの海士町では、「官」と「民」とが連携をしながら、島のファンを増やすべく「まちづくり」に挑戦してきました。
しかし、昨今の急速な時代の変化とともに、地方課題は深刻化しており、海士町においても、地域の担い手不足という課題はとても大きなものとなってきています。
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そんな中2018年度より、次の新たな挑戦の一手として、役場職員が「官」という立場にとらわれない自由な発想と、それを仲間と共に実現していく実行力を活かしていけるような、新しい働き方が生まれました。それが、「半官半X」という働き方です。
海士町が取り組む半官半Xとは?
半官半Xの構想が生まれたきっかけは、「まずは役場職員自らが担い手になったらどうか」と考えたことでした。日本全国が抱えている後継者不足という課題。
この問題に向き合うために、日本初の取り組みである半官半Xという働き方をスタートさせました。半官半Xという働き方には大きく2つの特徴があります。
01:役場職員自らが地域の担い手になること。
自分自身の仕事の管轄だけでなく、海士町の抱える課題や役場の抱える課題、すべてに当事者意識を持って働ける役場を目指しています。
役場でのデスクワークの働き方に加え、地域へ飛び出し、現場に足を運ぶ。そして地域のみなさんとともに手作業を通して語り合う中で、 現場の課題を解決し、多様な仕事に挑戦できるような働き方を大切にしています。
02:自分の「好き」や「得意」を地域に還元すること。
『官』として役場の業務に従事するだけでなく、『X』として自分の「好き」や「得意」を地域に還元する働き方を大切にしています。
農業、漁業、林業、観光、医療、福祉、教育、IT、芸術など、地域の為になることであれば、どんなことでも構いません。今までしてきた経験をぎゅっと詰め込んで、地域に活かしていくことを目指しています。
これまで取り組んできたことを時代に合わせた形で次の世代へ紡いでいく。
海士町役場では、そんな承前啓後(昔からのものを受け継いで、未来を切り開いていくこと)の精神のもと、新しい働き方を探究しながら、島のまちづくりを推進しています。
まずは、半官半Xで制作したこちらの動画をご覧ください!島で働くイメージフィルム(4分)です。
半官半Xの定義と目的
この半官半Xという新しい働き方をふまえて、「海士町半官半X制度等を定める条例」を制定し、公務員が庁舎内業務に加え、地域の多様な仕事に挑戦していきます。
■ 海士町半官半X制度等を定める条例
(目的)
この条例は、海士町における職員の自発的な地域活性化及び地域課題の解決への取り組みを喚起し支援するとともに、町政の運営に欠かせない職員と地域との交流を増加させることで、職員が地域社会及び地域経済の重要な担い手になることにより、もって職員の働き方改革を推進し持続可能な地域の発展及び地域社会の活性化に寄与することを目的とする。
(定義)
職員が、職員としての身分を保持したまま、職員の自発的な興味関心に基づき、勤務時間の一部を利用して地域活性化及び地域課題への取り組みを行うことをいう。
仕事において、自分の業務さえやっていればいい。ということではなく、もっと海士町全体を、社会全体を盛り上げていけるよう、広い視野でものごとが見えていないといけません。
いろいろな活動の中で、感性を磨き、現場に出向いて、職員が感じ取って、それを自分の仕事に生かす。幅広い価値感・観点で、地域の課題に取り組んでいきます。
兼業型と公務拡大型という2つの働き方
半官半Xでは、職員の働き方にあわせた、兼業型と公務拡大型の2つの働き方があります。
兼業型(半X)
兼業型とは、職員が趣味や特技を活かした活動をすること。職員がやりたいことをベース(給料減額)に、「地域のためになる」ことであれば、どんな活動も可能です。兼業型は希望制で、特別休暇や営利企業等に従事する許可制度を活用することができます。
兼業型 半X活動例
・水産(イカ釣り、かなぎ)
・農業(田、畑)
・畜産(牛飼い)
・遊漁船(営業)
・商品開発(お菓子づくり等)
・IT関連(起業)
・家庭教師
・観光イベントなど
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特定半X活動(公務拡大型)
特定半X活動は、半X活動と異なり「緊急性」「公益性」を重視し、職員が業務の一環として従事します。
特定半X活動の例
・後鳥羽院顕彰事業等、町のイベント
・崎みかんPJ・海士ワインPJ
・土木工事(災害復旧工事等)
・農地保全、拡大
・神楽・民謡等伝統文化
・急患搬送(船舶免許保有者)
・スクールバス等運転(免許保有者)
・ベビーシッター・デイサービス
・配食サービス・部活動指導
・民間、三セク、法人、組合支援 など
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今年度の半官半X職員は、特定半X活動(公務拡大型)として、看護師資格を活かした診療所や福祉施設の支援をはじめ、これまでの経験や得意分野を活かした活動をスタートしています。
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あわせて、海士町の様々な現場を知るために、一次産業を体験する取り組みもはじまっています。
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一緒になって汗をかく。この一体感がすごく大事
さいごに、半官半X特命担当課長の松前さんに、お話をお聞きしました。
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半官半X特命担当 松前課長:
前例のない新しい働き方である半官半X。これからも海士町のためになることを軸に行動していきます。
なんでも地域の現場で困ったことがあったら、地元の人も、移住してこられた人も、一緒になって汗をかく。この一体感がすごく大事で、地域とともに寄り添っていくことを目指していく。
「自分の仕事ではないから現場にある課題は関係ない」ではなく、そこで何が足りないのか、自分で足を踏み込んで、一緒に寄り添い、現場の課題を支援することが公務員として本来のあるべき姿ではないでしょうか。
そのきっかけを海士で作っていくことを目指しています。
まだまだ手探りな部分もたくさんありますが、見てくださったこの記事や、半官半Xのマガジン記事を通して、「好き」や「得意」を地域に還元する働き方を知っていただければと思います。