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島を象徴するレストランとして、Entô Diningのすべてを島の総力戦で。

2021年7月1日にオープンする、島で唯一のホテル×ジオパーク施設のEntôでは、Entô Dining が併設されています。

Entôスペシャルインタビューの2回目は、ダイニングの調理を務めるマネージャーの阿部さんと、中山さんにお話をうかがいました。

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ひときわ目を引く海を眺めながら島のコース料理を


Entô Dining の特徴は、海を眺めながら季節のコース料理を楽しめるところです。内装はできるだけ無機質に、色味やトーンを抑えているそうで、余計なものが目に入らない空間になっています。

そのシンプルさから、窓の外に広がる海がより際立って見え、夕陽が沈んでいく光景も見ることができます。

カウンターに座ると、海士町を象徴する料理人のチームと町の食材の向こうに、海士町を生んだ素晴らしい風景を味わうことができます。まさに海士町の魅力を堪能できるダイニング。

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鉄板焼きを楽しみながら海を見ることができます


Entô Dining は宿泊者だけでなく、島内のみなさんも食事を楽しむことができます。テーブル席が6席と個室が2部屋あり、鉄板焼きの前のカウンターにも6席ございます。海を眺めながら目の前で鉄板焼きをお楽しみいただけます。

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島を象徴するレストランを目指すために、チームでメニューを考える


ーEntô Dining で大切にしていることはなんですか?

Entô Dining ではダイニングスタッフ全員でコースメニューを決めています。多くのレストランでは料理長の指示のもと、メニューや味が決まっていきます。

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Entô Dining マネージャー 阿部 加奈子さん:大分県大分市出身。1987年生まれ。大阪や東京のホテル、鉄板焼きレストランで11年間焼き手や店長を務める。

料理長が決めた料理を作ると、それは料理長のレストランになってしまう。生産者さんのアドバイスやダイニングスタッフの意見、地域のみなさんの知見をいただき、みんなでこうしたら料理がもっとすばらしくなるという考えをどんどん取り入れてメニューを決めていくことをEntô Dining として大切にしています。

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各地から料理好きな仲間が離島にあるEntô Diningに集まってるからこそ、島を象徴するレストランになるようにスタッフみんなで考え、お客さま一人一人に向き合いお客さまに合わせた料理を提供し、その日にお出しできるベストを尽くしたいと思っています。


ー海士町の食材について教えてください。

海士町の食材をふんだんに使っていますね。前菜、スープ、サラダや焼き野菜などは、メニューを決めてから買い出しに行くのではなく、毎日しゃん山(港にある直売所)に足を運び、野菜をみてから、当日お出しするメニューを考えています。

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しゃん山(直売所)では、海士町産の食材がずらり


海士町は離島のため、いろいろな産地から食材を仕入れることと比較すると、どうしても野菜の種類が限られてしまいますが、どう調理をしていくのか工夫する幅が広がりました。

料理のジャンルや個人のこだわりに固執しないからこそ、提供できる一皿の価値を最大限高め、まさに今、ここでしか味わえないダイニングでありたいと思っています。

海士町にない食材は、種を取り寄せて私たちの小さな畑で育てることもあります。島のキャッチコピーは「ないものはない(必要なものはすべてここにある、なくてもよい)」ですが、ときに「ない」で困ってしまうこともあります。

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自分たちで育てている畑


なければ自分たちで育てていきたいですし、量が必要な野菜は、役場で第一次産業を担当する地産地商課と連携して農家さんにつくっていただくなど、少しずつですが、できることを挑戦しています。

Entô Diningでは特に、海士町のこの季節でしか食べられないものを中心に使うようにしています。海士町産の食材としてなかなか手に入らなかったハーブやバジル、エシャロットなども育てています。

自分たちが育てたものや自分たちで海に入って採ったホンダワラなどの海藻を使うことも、お客さまによろこんでいただけるのではないかと思っています。

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Entôの近くにある海藻(ホンダワラ)を収穫


毎日島の宝探しをしている気持ちでワクワクしています


ーEntô Dining としてこだわっているとこはありますか

お客さまに満足いただくために、何をするべきなのかを常に考えています。
Entô Diningはホテルにあるダイニングなので、宿泊されるお客さまの情報をもとに、どこから来られるのかや年代、人数などを踏まえて、お客さまそれぞれに合わせた料理を提供するように工夫しています。

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また、お客さまのイメージによってダイニングに飾る島のお花を工夫するなど、「今ここに来られたお客さまと」つくれる空間を味わっていただきたいと思っています。

毎日スタッフ全員でミーティングの時間をつくり、お客さまはこのような方で、年齢はいくつで、というものをヒントに、このような料理にしようと話し合うことを大切にしています。

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Entô Dining の調理スタッフのみなさん


―Entô Dining スタッフが提案した料理のアイデアが複数でたときはどのように決めるのでしょうか。

それは今日のお客さまにとってどっちがいいと思うのかが答えなので、自分が出したい料理ではなく、お客さまに最もよろこんでいただけるのはどちらなのかという方向性で決めていきます。

出した結果どうだったかというのは、ちゃんと受け止めて、次につなげるように考えていきます。

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崎みかんを使ったガトーショコラ。
大地に新芽が芽吹いた、ジオパークを感じさせる構成。


ー最近のエピソードを教えてください。

先日、島内にある後鳥羽院資料館の運営をされている隠岐桜風舎のみなさんが来てくださったときに、後鳥羽上皇がおられた時代にもつくられていた古代菓子を出すのがおもしろいのではないかとスタッフからのアイデアで、

さくべえという古代菓子をアレンジし、デザートとしてコースの最後に提供しました。ちょうどその日が満月だったこともあり、とても喜んでくださいました。

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Entôスタッフである長松さんが、後鳥羽上皇の絵をかいたり、アジサイと花火を立てたりと、協力してくださり、みんなのアイデアを集めて提供できたことがうれしかったですね。

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隠岐桜風舎のみなさん。
チョコペンで描かれた後鳥羽上皇はEntôスタッフが制作。


また、クロモジからつくられる島のハーブティー「ふくぎ茶」をつくっているさくらの家(社会福祉法人だんだん)のみなさんが来てくださったときには、ふくぎ茶を前菜からすべてのコース料理に入れてお出しました。

さくらの家のみなさんに合うものをお出ししようと思うと、やはり自然とふくぎ茶のメニューが浮かび、みんなで話し合って、ふくぎ茶を使ってどのような料理にしていくか考えていきました。

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クロモジからつくられる島のハーブティー「ふくぎ茶」

デザートメニューは、当時海士町でふくぎ茶を開発した一人でもあり、現在は地元の大分県で飲食店を経営しながらEntô Dining のアドバイスもしてくださっている後藤さん(長年に渡り海士町とつながり続けてくださっています!)にメニューを相談し、一緒に考えました。

ディナーの当日は、後藤さんをzoomでつないで登場していただき、みなさんびっくりして盛り上がってくださいました。

これからもこのような連携ができれば、もっと面白いダイニングができあがっていくような気がします。

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こういったメニューを考えるときに、多くのレストランでは料理長の采配でメニューが決まるため、スタッフのアイデアでお客さまに提供してみたいものがあったとしても、なかなか実現できないことが多いんです。

そのお客さまのために、満足いただけると思ったことはお料理もサービスもどんどんしていきたいと思います。

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私は、スタッフ全員がお客さまに向き合い、お客さまのことを考えて料理をすることが正しい料理人の仕事・姿勢だと考えています。

リーダーという立場として、そのための環境を整えていくことも自分の役割だと思っているので、ダイニングスタッフの面接をしたときにも、このような環境に合う方、協調性があるか、などは特に意識していました。これから新しい仲間が増えるときも、こういうところは譲れない部分です。


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調理スタッフとして阿部さんと一緒に働く中山さんにもお話をうかがいました。

島で料理をすることにぴんときた中山さんは、今年(2021年)の3月に海士町に移住し、Entô Dining スタッフとして合流しました。Entô Dining でのご自身の変化があったそうです。

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中山 琢也さん:兵庫県尼崎市出身。1994年生まれ。大阪の調理師学校卒業後、大阪や東京のフランス料理店で6年カフェで1年働き、フィリピンでの英語留学を経て今に至る。


ーEntô Dining で働いてみてどうですか。

私としては、めちゃくちゃ働きやすいです。これじゃないと駄目というものがなく、その都度お客さまに喜んでいただけることを考え、ミーティングや仕込みの段階でみんなと話し合い、決めています。

このようにしたら海士町らしい料理が提供できるのではないかという提案をして、みんなで考えて作り上げていくことが私にとってすごくいい環境だなと感じています。

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先日、大分県の温泉水や温泉の蒸気を駆使して料理されている店に研修に伺ったのですが、そちらのシェフにいろいろなアドバイスをいただき、料理に対するアプローチや、地方で料理をすることはどういうことなのかを改めて考えるきっかけになりました。

これまでは、技術を高めることを特に意識して働いていたのですが、海士町に住んでからは、地域のために料理を作ることにも重きを置くようになりました。

生産者のみなさんとの距離が近いので、お客さまはもちろん、食材を育ててくださったみなさんにも喜んでいただけるような料理を作っていきたいと考え方が変わっていきました。

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ー なぜ気持ちが変化したのですか

町民のみなさんとの距離が近く、実際に話して仲良くなったり、またEntôスタッフのみなさんがそれぞれの仕事の中で、自分のベストを尽くそうとしている姿を見て、感化されました。

みなさんの思いのバトンをもらっていると感じ、みなさんの思いをつなげてお客さまに満足していただきたいと思うようになりました。


ー今目指しているダイニングはどのようなものですか

① 野山や海などあらゆる島の食材を駆使する
② ダイニングとしての知名度をあげ、島内からも島外からもたくさんの方に来ていただく
③ 島の生産者や漁師さんと連携し島の季節の食材を仕入れる

この3つを循環させることができるようになっていきたいと思っています。

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観光で来てくださるお客様が増えることで、Entôがにぎわい、宿泊の2日目は島内の飲食店で食べたりと、島全体が一層にぎわっていく流れをつくりたいです。

自分の成長、技術を高めていきたい気持ちと同等に、「島のために」というマインドを持つようになりました。
  
1番大きかったのは大分県のシェフから、地方で料理をすることの意味、大切なことはなにかと問われたことですね。自分がこの島でなにができるのかを考えるようになりました。

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また、海士町にはまだ気づいていない未開拓の食材もあると思います。

最近、研修で隠岐神社に行き、そこでカタバミという食べられる植物を見つけました。まだまだ開拓できる食材がたくさんあることに気づきわくわくしています。

0からメニューをつくり上げているので、そういった未開拓の食材も提供できるようにしていきたいです。

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Entô Dining のすべてを島の総力戦で。お客様に離島までまた足を運んでいただくことが本当のはじまり


ー阿部さんに、これからのEntô Dining についてお聞きしました。

海士町に自生する野草や、これ食べるの!?といったような島の食材のものを使ったり、ジオパークを感じられる料理の提供も考えています。

Entô Diningに飾っている花瓶は、島の陶芸家である隠岐窯の勇木さんからお借りしている作品なのですが、これからお皿なども一緒につくっていきたいと思っています。

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最近、フィールドワークに連れていっていただいたときに、もっと島のことを知らないといけないと改めて感じました。料理を通じて島のストーリーを伝えてほしいとリクエストされることも多いのですが、私たちは島で育っていないので、地元のみなさんと比べるとわからないことが多いです。

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具体的にどんなストーリーがあるのかや、Entôのダイニングとしてお客さまに何を伝えたいのか、もっと島のみなさんを巻き込んで考えていかないといけないと思っています。

島としてどういう場所でありたいのか、島のみなさんを巻き込んでつくっていければと思います。Entô Diningのすべてを島の総力戦で提供していきたいです。

そういった意味で、はるばる遠い島まで来てくださって、「楽しかったね、おいしかったね。」で終わってしまうのは島を象徴するダイニングとしての役目を果たせていないと思っています。

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Entô Diningでのディナー。18時からのご夕食では夕陽の景色もお楽しみいただけます。


私たちの想いがどれだけ詰まっていても、お客さまに伝わらないと、意味がありません。

また遠くまで足を運んでいただくために、次も来たいと思っていただく料理やサービスを提供すること、そして、再訪してくださったときにどのような島としてのおもてなしができるのかを考えることが、Entô Diningとっての本当のはじまりになるのではないかと思っています。

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阿部さん、中山さん、ありがとうございました。
Entô Dining では、お食事のみの方もご利用いただけますので、海士町にお越しくださった際は、ぜひ訪れてみてください。

Entô Dining について

営業時間:事前予約制(18時または20時から)
席数:20席
ご予約:3日前までにご連絡ください。(電話:08514-2-1000)
コース(ご夕食):8,800円と11,000円の2種類(税別)
岩ガキなどの海の幸と隠岐牛を楽しんでいただけるようなメニューになっています。
ご朝食:朝食は2,000円(税別)(ご宿泊者のみ)
隠岐牛のポトフなどを提供しております。素材の味を楽しめるよう、隠岐牛や野菜のスープから作っています。



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