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ピースウィンズ・ジャパン代表理事の大西さんが語る。能登半島地震への支援と、海士町での今後の取り組み。

先日取材で訪れた、ゲストハウスたちばな

ゲストハウスとしての顔を持つ傍ら毎月1回は交流サロンとしても親しまれている空間です。

今回は、国際協力NGOピースウィンズ・ジャパン代表理事の大西健丞おおにしけんすけさんをお招きしたトークイベントが開催されました。

平日にも関わらずゲストハウスたちばなの交流スペースには島のみなさんでいっぱいです。能登半島地震への災害支援や、これから海士町で取り組もうとしているプロジェクトについてお話をお聞きしました。



国際協力NGOピースウィンズ・ジャパンとは
ピースウィンズ・ジャパン(以下、ピースウィンズ)は、国内外で自然災害、あるいは紛争や貧困など人為的な要因による人道危機や生活の危機にさらされた人びとを支援する国際協力NGO法人です。

海士町とピースウィンズは2023年4月に連携協定を締結しました。海士町を日本海側の拠点とし、災害時の支援協力や地域振興、人材の確保・育成などの面で互いに協力することを定めました。

協定の連携・協力内容
(1)持続可能な地域振興(医療、福祉、産業、経済、教育)に関すること
(2)上記を達成するために必要な人材の確保、育成に関すること
(3)災害等緊急時における支援協力に関すること
・災害等緊急時応急対策活動 
・行方不明者の捜索活動 
・避難所運営支援 
・地域の被害状況等の情報収集 

2023年4月協定式にてヘリコプターのお披露目


能登半島地震での支援について

ピースウィンズ 代表 大西さん:
2024年1月1日に石川県能登半島地方で発生した震度7の地震を受けまして、情報収集と出動準備を行い、いち早く医療チームやレスキューチームを被災地へ送りました。ご存じの方もいらっしゃるかもしれませんが、海士町のみなさんにもご尽力いただきました。

三が日に地震が発生したこともあり、お店があいておらず、燃料も手に入らない。

海士町の大江町長に電話をして、「我々の船が能登半島へ行く際に、海士町を通るので、ぜひ停泊させていただきたい。場合によっては救援物資を買わせてください。」と話したところ、すぐに了承をいただきました。

唯一、三が日に燃料を売っていただくことができ、いろんな物資を積んでもらいました。


ピースウィンズ 代表 大西さん:

ここでお世話してもらったおかげで、奥能登の港に入った船としては1番最初でした。海士町の事業所のみなさま、協力いただいたみなさま、本当にありがとうございました。


被災地でのピースウィンズさんの取り組み


ピースウィンズ代表 大西さん:
被災地では倒壊した家から救助するとき、クラッシュシンドロームといって筋肉が長時間圧迫されている状態から圧迫が解除されるとショックを起こして最悪死に至るという危険性があります。

瓦礫等で挫滅した筋肉から発生した毒性物質が血流に乗って全身に運ばれないように、 30分くらいかけて薬を投与しながら毒素を薄くして、万が一心臓が止まったときのリスクも考えながら、救助作業を進めました。

普段の訓練や現場経験の積み重ねもあって、命を助けることができたと思っています。

古い大きな家ほど倒壊する可能性が高いんです。また、下敷きになってしまうとなかなか助け出すことが難しい。

地域の消防団を含めてですけど、消息不明になった人を確認したら、その後どう助けるかが課題。チェーンソーの使い方を訓練したり、普段は森林組合で働いている人に協力を求めてもいいと思うんです。

ちょっとした工夫で助かる命が増えるんじゃないかなと思います。島もいつ津波や地震が来るかはわからない。自分たちでそういう訓練や装備を持っておいてもいいのかなと思います。あとは、クラッシュシンドロームの被災者の治療を行う医師・看護師・救命士などが練習するだけでなく、一般の人も知識として確認しておく必要があります。

もしよければ我々の経験があるチームと一緒にどういう対応をすべきか、今後お話などできたらなと思っています。

トークイベントに参加された海士町のみなさんは、真剣なまなざしで大西さんのお話を聞いていらっしゃいました。

海士町noteスタッフの私は、大変なときに互いに手を差し伸べることができる、そんな関係性が大切なのだと感じました。

続いての話題に進む前に、ちょっと小休憩。

ゲストハウスたちばなを営む扇谷さんお手製のおはぎをみんなでいただきました。おはぎを味わいながら、大西さんとお話をされている方もいらっしゃいました。


海士町での今後の取り組みについて

後半は、ピースウィンズさんが考えてくださっている海士町での取り組みについてです。連携協定の持続可能な地域振興に関することで、3つのプロジェクトを考えていただいています。

①離島で暮らす人たちの健康づくりと持続可能な医療への貢献

ピースウィンズ代表 大西さん:
災害支援用に配置する医療人材やヘリ、船舶を、ふだんはそのまま、地域のためのリソースとして活用することや、高度な医療機器を導入することで健康を維持し、病気にならないための取り組みのサポートをするなど、海士町のみなさんが安心して島に住み続けることができるような仕組みを考えていきたいと思っています。

②定置網漁で採れる未利用魚の活用

ピースウィンズ 代表 大西さん:
海士町の事業者さんとお話していることがあって、海士町では定置網漁で小さいアジやサバなどがたくさん獲れるときがあるのだと聞きました。

ただ、燃料代が高騰しているので、本土に出すと燃料代や人件費のほうがかかってしまう。その結果、獲れても市場に出荷できない魚がでてきてしまうそうなんです。

今後は、そういった出荷できない魚をうまく加工して本土へ出荷できないかと考えています。食べたらおいしい魚を加工して、1つの産業ができたらと思っています。


先日取材させていただいた島前高校生の記事でも、未利用魚の話がありました。今後うまくつながったらいいですね!



③地域教育との連携

ピースウィンズ代表 大西さん:
ピーズウィンズの取り組みの一つに、全国の児童養護施設の中で留学したいという子を集めて、アメリカに短期留学をするStudy in Americaというプログラムをやっています。

海士町の教育とも連携して、留学したい生徒さんを選抜いただき、短期留学する機会をつくれたらいいなと思っています。大学や大学院への進学を希望する学生への独自の奨学金制度などもつくっていけるといいかもしれませんね。


海士町での問題解決が日本全体のためにもなる

トークイベント終了後に、大西さんの海士町に対する思いもお聞きしました。

━━貴重なお話、ありがとうございました!今回のように海士町のみなさんとお話しする機会はこれまでもありましたか?

ピースウィンズ 代表 大西さん:
これまでに3回くらいありました。海士町のみなさんと話し合うことができる場は、とても大事だと思っています。

こういった場だと、みなさんの本音を聞くことができます。地区ごとに違う意見を持っていることもありますよね。どの地区がどういう思いを持っているかなど、こういった場所で初めて気づけることがあるので、とても大切です。

なにかプログラムがはじまるときにも、島民のみなさんが何をしているのか、何を思っているのかを知っておくことが重要なことだと考えています。

━━海士町とどのような関わりをしていきたいですか?

ピースウィンズ 代表 大西さん:
私がピーズウィンズという団体のトップなので、まずは自分が関わっていきたいと思っています。担当の者が海士町で話をすることもあるのですが、できるだけ私が海士町を訪れて、足を運んで話をしようと思っています。

━━海士町への想いは?

ピースウィンズ 代表 大西さん:
もう少し海士町のためになることをやりたいなと思っています。
できれば小さい家でも作って、海士町に住みたいと思っているくらいなのですが...。

海士町で問題解決するということは、日本全体のためにもなるだろうと考えています。自分たちの問題だけではなく、似たような問題に直面している問題を解くことの先駆けになるはずです。

志を高く、心を大きく持ち、一緒に頑張っていきたいですね。




ゆくゆくは海士町に事務所を設けることも視野に入れていると大西さんは話します。
今後の本格的な動きにも注目です。


(R5年度大人の島留学生:渋谷・柿添)


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