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未来に漕ぎ出す船「あま丸船」をモチーフに~新庁舎リメイク家具ストーリー~

2024年11月に新しくなった海士町役場。その空間を彩っているのがユニークな家具たち。海士町新庁舎魅力化プロジェクトの家具職人チームによって生まれ変わったリメイク家具にまつわるエピソードを紹介します。


船をモチーフにした家具を

新しい役場に入ると1階の「しゃばりば(共創スペース)」でまずドカンと目に入ってくるのが船をモチーフにした家具たち。

「ん?家具?」という一見使い方を考えてしまうような家具らしからぬ家具たちは、上から見ると複数のアイテムが融合して船の形になっています。

「未来にむかって漕ぎ出す船」がテーマになっている海士町役場の愛称「あま丸」。そのテーマを象徴する家具が「あま丸船」です。

海士町新庁舎魅力化プロジェクト。新しい役場を『リメイク家具』で彩る。「新しい役場が出来た時に、古い家具が清掃センターで山積みになって捨てられていたら、それって海士らしくないよね」そんな意見からスタートしたこのプロジェクト。

「ないものはない」をスローガンに掲げてきた海士町において、役場が新しくなった時、どんな空間になっているのが理想か。
放っておいたらゴミになってしまう古い家具たちを、工夫とアイディアで生き返らせてみることにしました。


たくさんの「どうやって再生しよう?」と悩む家具たち

旧役場内、開発センター内、リニューアルしたばかりのキンニャモニャセンター内や、島内の一般家庭から、これから使う予定の無い家具や、使い道に困っている家具を集めていくと、いくつかは「これどうやって使おう?」と悩んでしまうものがいくつか出てきました。

その代表格が年代物のロッカーでした。

長年庁舎で使われていたアルミ素材の家具たちでした。学校の職員室や役場の執務室でよく見るグレーに塗装された重量感のある家具。

木で出来ている家具は、磨いたり、削ったり、時には解体して材木にしたりと様々な使い道がありますが、アルミを再加工することは難しく、どう再生(再利用)したものか?と頭を悩ませました。

職人さんがアルミフレームの家具を解体して、どう使えるか研究している様子


複数の家具を繋ぎ合わせると船の形

解体してみたり、天板を変えてみたり、家具と家具をつなぎ合わせたり、うまく再利用できたものも、残念ながら今回は活躍どころがなかった家具もいましたが、さまざまな工夫を凝らして、古い家具たちを船のかたちに配置することにしました。

2024年7月頃のイメージスケッチ


海士町議会で使用されていた演台・花を置く台(あま丸演台テーブル、あま丸花台テーブル)

「あま丸船(家具)」の船頭と船尾に使われているのは、旧役場3階にて海士町議会が行われていた際に、議長が座る演台とその横でお花を飾る台であった2つの台です。

町の行き先を決める大事な議会を長年支えてきた家具が、補強され船を前に進める先頭と船尾に生まれ変わりました。

                   子ども議会の様子


開発センターで使われていたロッカー(あま丸ロッカーテーブル)

開発センターの事務所で長年使用されていた旧式のロッカー。錆びてきたり、戸の建て付けが悪くなってきたり、重くて模様替えの時は大変など、そろそろ引退かな?という雰囲気でした。

このまま産業廃棄物になってしまうのはもったいないので、何か使えないか?と考え、材木を付け足すことで本来のロッカーの役割から、本棚とテーブルに生まれ変わりました。元々丈夫な作りの素材なので、このまままた数十年と活躍してくれるでしょう。


旧役場2階の応接室で使われていたソファ(あま丸応接ソファ)

旧役場の2階、町長室の前に位置していた応接室。今までたくさんのお客様をお迎えし、お話しする場所でした。

ずっしり深く腰掛けるスタイルのソファ。年数は経っていますが、まだまだ現役で活躍できそうな様子だったため、肘掛けの部分を再生し、少しだけ新しい空気をまとわせることに。

肘掛けに装飾された木材は、海士町内で建設現場や倉庫などで眠っていた古材、廃材を使いました。クスの木、タブの木、栗の木、桜の木などが使われています。どの木片がどの木かわかるかな?

旧役場2階の応接室で使われていたソファ


海士町議会で使われていたフレームチェア(あま丸ホテルチェア)

こちらの椅子は元々海士町にあったものではなく、役場の職員が松江での出張の際にお世話になっている、ホテル「白鳥」さんの廃棄予定だった椅子をお譲りいただいたものになります。海士町議会で使われるようになり、2024年9月まで現役で活躍中だった椅子は、フレームがスチール製で非常にしっかりしており、がっしりとした構え。少し重くて使いにくいのが難点でもありますが、捨てるにはまだまだもったいない。

50脚近くあり、今回のリメイクで様々なかたちに変身しました。そのうちのひとつが「あま丸船」のフレームを表わしたベンチです。

あま丸船のスケッチ
海士町議会で使用されていた椅子


海士町の匠会の協力

これらの家具は海士町匠会(職人さんの集まり)にご協力いただき、制作の際に一緒に作っていただきました。

海士町の建設現場はいつも大忙しですが、短い時間の中で、共に海士町の未来に残る家具を作ることにご賛同いただきました。

匠会の方に製作協力頂いている様子


こんな風に使ってもらえたらうれしいな

「あま丸船」の使い方は未知です。椅子のようでテーブルにもなるし、テーブルのようで本棚にも。勉強したり、くつろいだり、パソコン仕事したり、お弁当食べたり。決まりはありません。

大人から子どもまで自由に、そして大切に使ってもらえたらと思います。よく見たらわかる昔の家具の面影を楽しんでください。

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