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島だからこそ見えてくる食の可能性。ニッポンフードシフトさんと考えてみた

「食から日本を考える。」
ちょっと大ごとに聞こえてしまうかもしれませんが、みなさんはこの言葉を聞いてどんなことをイメージされますか?

島根県の離島、海士町は、海・山・田畑に恵まれた半農半漁の島です。

自然いっぱいです

海士町noteスタッフの私は、島の飲食店でちゃんぽんをいただきながら考えます。

「島内で自給できない食材たちは一体どこからきたのだろう?」

ほかほか!

こんなことを考えるようになったのは…
つい先日、うれしいつながりが生まれたからなんです!

10月にnote placeで開催した海士町NOWイベントで、ニッポンフードシフト事務局の方が参加くださり、そのつながりの中で、なんと農林水産省さんにお邪魔させていただくことになりました!

【ニッポンフードシフトってなに?】
時代の変化に対応し日本各地の食を支えてきた農林漁業者・食品事業者の努力や創意工夫について消費者の理解を深め、良いところは伸ばし変えるべきことを変え新しいことにもチャレンジする取組を応援する国民運動です。
「食から日本を考える。ニッポンフードシフト」をスローガンに、農林水産省が展開しています。

https://www.maff.go.jp/j/press/kanbo/anpo/211018.html


ということで、
東京霞ヶ関にある農林水産省へ、海士町役場交流促進課の岩見さんとお邪魔してきました!

貴重な機会です…

農林水産省のみなさんにご挨拶し、お話をさせていただきました。

農林水産省のみなさん
左から、宮田さん、足立さん、奥泉さん

岩見)本日はどうぞよろしくお願いします!
10/1に、東京四ツ谷で「海士町NOW」というイベントを行っていました。
ニッポンフードシフトからも事務局の方にご参加いただきありがとうございました!海士町NOWはいかがでしたでしょうか?

ニッポンフードシフト事務局)海士町さんの地方創生の取り組みがすごいということは、以前から聞いていました。昨日のイベントで、実際に人口が下げ止まっているというデータを見せていただいたり、具体的な取り組みをお聞きして。

👆当日の様子はこちらから!


ニッポンフードシフト事務局)ほかの自治体さんって、自治体とその町の事業者さんという関係性が多いと思うのですが、海士町の場合、島全体がまるで一つの会社のよう。
いろんな方々が関わって「海士町のために何ができるか?」と言うことを考えているのだと感じました。ほかにはない珍しい事例なのだろうなぁと思いました。

海士町 岩見)ありがとうございます。確かに、島全体がまるで一つの会社のようだというのは私も同じように感じています。
事業者さんも行政も一体となって、「より良い海士町にしていきたい」という共通の目的を持って、それぞれの役割や専門とする分野を担っているように見えています。

…では、ここからは本題のニッポンフードシフトについてお聞きできればと思います!
ニッポンフードシフトは具体的にどのような取り組みをされているのでしょうか?


わかりやすく、食について考えるキッカケを

農林水産省 奥泉さん)ニッポンフードシフトとは、「食から日本を考える。」をスローガンとする国民運動です。
近年の日本は人口が激減しており、同じように農家さんの就業人口も減少しています。さらに現在就業されている農家さんが高齢化している現状があります。

農林水産省 奥泉さん)私の幼少の頃の話になってしまいますが、ひと昔前は、学校のクラスの中に4、5人は農業を営むご家庭の子がいたんです。また、近所の農家の方が家に野菜を売りにきてくれたりする環境がありました。

今は、農家の子や、親戚で農家をやっている方とか、全体としてすごく減ってきているのと同時に、「普段食べているものが、どこでどうやって自分のもとへ届いてきているのだろう?」と考える機会も減っているのでは、と感じています。

自分と食との関係性に気づく機会が、なくなってきてしまっている。

これを「食と農の距離が拡がる」と表現しています。このように課題がたくさんある状況なので、一つ一つの課題を知ってもらおうとしてもなかなか実感が湧かないですよね。

そこでわかりやすく、「食について考えるキッカケを」と、始まったのがニッポンフードシフトです


農林水産省 奥泉さん)日本の食について老若男女問わずみんなで考えていきたい国民運動ではあるのですが、その中でも、これからの時代を背負っていかれる方々、特に自ら食を選択し始める大学生前後の世代(Z世代)にこの取り組みが届いたらという思いがあります。

公式サイトはみなさんに興味を持ってもらえるよう、なるべく分かりやすく、見やすいように作りました。GIF(簡易的なアニメーション動画)を入れてみたり、
「なんだろうこれ?」とクリックした先に、読みやすい分量の情報があるようにしています。

焼き芋が世界進出
(NIPPON FOOD SHIFT公式サイトより)

海士町 岩見)海士町のことも取り上げていただいて…ありがとうございます!

離島の農漁業と移住者のベストマッチ
(NIPPON FOOD SHIFT公式サイトより)

農林水産省 奥泉さん)海士町っていろいろな取り組みをされていて有名じゃないですか。
島留学とか、noteを見ていても興味深い取り組みがたくさんある。ただ、なかなか簡単には行けない場所ですよね…

海士町 岩見)そうですね、少し距離があります…笑

本土から海士町までは、
高速船かフェリーで約2~3時間

農林水産省 奥泉さん)でも、限られた中でテクノロジーを使ってどう発信していくか、というところにも積極的に取り組まれていて。実はニッポンフードシフトの公式noteが始まったとき、最も参考にさせていただいたのが海士町noteさんなんです。

海士町 岩見)ありがとうございます!!

農林水産省 奥泉さん)ほかにも、ニッポンフードシフトとして、吉本興業さんとのコラボレーションもしています。

吉本興業さんが47都道府県住みます芸人という取り組みをされていて、それぞれの活動をいろいろな地域でじっくりとやってらっしゃっています。
実は、食べ物の名前がつく芸人さんがたくさんいらっしゃるので、それぞれの芸人さんに、ここぞ!というところへ実際に取材に行っていただいて、動画を作ったりもしています。

農林水産省 奥泉さん)また、ほかのメディアへの展開もいろいろしています。昨年度は誰もが一度は食べているだろうカレーをテーマにしたコンテンツ「カレーから日本を考える。」を展開しました。

日本ではスパイスは輸入していることが多いですが、具材は地元のもので作ることができますよね。そして、ご家庭それぞれの味があったり。みんなが身近に感じることのできる食ですよね。


農林水産省 奥泉さん)その次がラップを入口に日本の食を考える企画を展開しました。ラッパーの皆さんにカレーや餃子をテーマにラップバトルしていただきました。

海士町 岩見)この企画、最高でした!餃子をテーマにしたラップバトルの動画を見たのですが、すっごく良かったです。

農林水産省 奥泉さん)ありがとうございます。RAP選手権はラッパーの方がいろいろと考えてくださいました。食材ごとの自給率を計算してリリック(歌詞)を書いて下さった方がいたり…


農林水産省 奥泉さん)
ニッポンフードシフトが始まって今年度で3年目。
誰もがおそらく食べたことあるよね、と今年度からは餃子をコンセプトに、「餃子から日本を考える。」も発信しています。

海士町 岩見)今回お声がけいただいて、ニッポンフードシフトのwebサイトを初めて拝見しました。見ていて、スクロールの手が止まらなくなりました。「こんな面白いことやっているんだ!」と。

デザインも洗練されていて、Z世代の私たちがニッポンフードシフトの取り組みを知っていること自体が「いいね!」と思える感じがします。


海士町の「ふるさと納税」

海士町 岩見)ではこの辺りで海士町の話も…
私自身は現在、海士町役場職員としてふるさと納税や庁内のDXを担当しています。今回は食と深く結びつきのある海士町の「ふるさと納税」についてお話しできればと思います。
ちなみに、海士町のふるさと納税の返礼品の中で、何が一番人気だと思いますか?

農林水産省 奥泉さん)居酒屋にあったらうれしい、イカとかですかね?

海士町 岩見)正解です!「イカ」は一番人気の産品です。二番目はなんだと思いますか?

農林水産省 足立さん)島だと水産物なのかな…?イカときたらタコでしょうか?

海士町 岩見)タコはあまり獲れないんです…でも水産物が人気なのは正解です!二番目に人気なのは、「いわがき」なんです。そして、三番目に人気なのは「隠岐牛」という島のブランド和牛です(2022年実績)。


島の未来を作る熱量に今、投資をする

海士町 岩見)実は、海士町にふるさと納税していただいたご寄付の25%〜30%くらいが「海士町未来共創基金」という基金に入ります。
この基金を島の新たな挑戦へ投資し、島に新たな産業と雇用をつくるという仕組みが2021年に始まりました。「島の未来を作る熱量に今、投資をする。」をコンセプトとした基金です。

先ほどのお話にあったような人口減少・高齢化による担い手の減少は、海士町でも同じように課題に感じているところです。

島のプロフェッショナルな事業者さんが引退され、事業を畳んだりするお店があったりします。それまで生活に必要だったサービスが島から無くなると、必然的に島の外に頼らざるを得ない、つまり外貨漏出にもつながったり、雇用機会の減少にもつながります。

このような状況の中で、海士町の中であたらな挑戦に投資する未来共創基金が生まれました。

海士町 岩見)海士町未来共創基金の申請条件はとてもシンプルなんです。

①500万円以上の事業であること。
②海士町の未来につながること。

実は、これまで海士町未来共創基金で採択された事業の中では、「食」に関する事業が2つあります。

今日はそのうちの1つ、一番最近始まった「近くで作って飲む、牛乳生産事業」をご紹介させてください。

海士町で、乳製品を買おうと思うと、結構お値段がして、簡単には手を出せなかったりします。それは、島には乳牛もおらず乳製品が製造できないため、本土から牛乳をはじめとした乳製品を仕入れています。そうすると、島までの輸送コストがかかってしまうので、本土に比べるとどうしても値段が高くなってしまいます。

海士町が島の外に頼っているのは、一番は電力なのですが、その次が食料品。

そこで、乳製品も地産地消できないかと課題感を感じていた事業者さんが未来共創基金を活用して、「生産者と消費者の顔が見える関係性を作る、食糧の小さな自給経済圏を作りたい」という思いのもと、この事業が始まりました。

近くで作って近くで飲む牛乳生産事業

海士町 岩見)海士町には乳牛がいないので、この取り組みは画期的でチャレンジング。島の潮風を浴びて育ったミネラルたっぷりの無農薬牧草を食べて育った牛のミルクを飲む。

乳牛の放牧を見ること、近くで島産の牛乳を飲むことを通して子どもたちの食育にも繋がりますし、採れたミルクをソフトクリームやチーズに加工して新たなニーズを作ることで雇用や、観光にも繋がるのではないかといろいろな可能性を描きながら着々と事業が進んでいます。

農林水産省 奥泉さん)思い立った人が「やろう!」と実際に動き出せる環境がいいですよね。

海士町 岩見)そうですね。この海士町未来共創基金の事務局を担当しているのがAMAホールディングスという第三セクターで、海士町役場の攻めの施策を担っていくことを目的に設立された会社です。
今後、さらに島の起業支援などを展開していく予定で、起業家育成にも力を入れていきたいと考えています。

事業が500万円未満の場合は、クラウドファウンディング型のふるさと納税で寄附金を募り、事業支援をするという仕組みも今年になってからはじめました。


チャレンジを応援する。推進する。

海士町 岩見)島の雰囲気として海士町のためになることをどんどんやっていこう、新しいチャレンジを応援しようという風土があると感じています。
失敗を恐れない、失敗が起きたら次に活かし失敗を失敗だと思わないという姿勢が今の海士町を作っているのだと思います。

足立さん)行政で働いていると、今までのやり方に合わせたり、前例がないため見送りになったり。新しいことに挑戦しにくいという雰囲気が、どこの役所も少なからずあるかと思います。
海士町はそういうところが全然なくて、驚きました。出てくるアイデアや、それを許可してくださる上の方々もすごいと思います。

若手職員からもアイデア出しもされるんですか?

海士町 岩見)ありますね、若手のやりたいことを「いっじゃん!(良いじゃん)!とりあえずやってみたらいいよ!」と背中を押してくれる方が多いと思います。
特に印象的なのは、海士町の副町長がよくおっしゃるのが「人生思い出作りだわい!」という言葉です。

結果までのプロセスやみんなで一緒に汗をかいて悩んだその過程が大切だと言い切っています。失敗してもいい、「面白いエピソードが増えてよかったじゃん!」と。もちろんうまくいくように最善を尽くしますが、こういった前向きな姿勢が、私たちの原動力になっているのかもしれません。

農林水産省 奥泉さん)すばらしいですね。ニッポンフードシフトでも食や農に関する取り組みをご一緒するべく、一つの柱として、推進パートナー制度というものを立ち上げております。現時点では、おかげさまで5,000を超える登録があります。


海士町 岩見)
すごい数ですね!自治体でも登録できるんですか?

農林水産省 奥泉さん)もちろんです。この推進パートナー制度は企業の方だけではなく、自治体や学校、部活、個人など…このプロジェクトに共感いただける方が無料で登録いただけます。

あまり知られていないのですが、推進パートナーさんは、小規模の団体さんが一番多いんです。団体の規模に関わらず、気軽に活用いただけてうれしく思っています。

登録した方はこのロゴマークを使用することが可能!


海士町 岩見)海士町は離島ですし、都市部に比べたら食と農の距離はかなり近い環境にあります。ニッポンフードシフトロゴを色々なシーンで活用させていただきますね!

農林水産省 奥泉さん)ありがとうございます。
今回のようなつながりをはじめ、ニッポンフードシフトの取り組みにご賛同いただいた方が、ほかの賛同者の方のロゴマークを見て、その輪が広がっていったのなら、さらにうれしいです。

海士町 岩見)ニッポンフードシフト、みんなで広げていきたいですね。
「食から日本を考える。」という言葉をはじめて聞いたときは、少し身構えてしまいましたが、お話をお聞きする中で、誰にでも関連のある身近なことなんだと実感することができました。

ありがとうございました!




島という空間だからこそ見えてくる食の可能性、
未来を見つめなおすきっかけになりました。

みなさんも一度、
食から日本を、食から自分の住む地域を、考えてみませんか?


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(R5年度大人の島留学生 文:柿添 撮影:渋谷)

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