「地方だけど、地方じゃない」海士町で。たくさんの出会いに導かれて過ごす、かけがえのない時間【海士町アンバサダー】
2024年5月よりスタートした『海士町オフィシャルアンバサダー制度』。海士町が大好きでその魅力をたくさんの人に知ってもらいたい。町作りに貢献したい、関わりたい、応援したい......。そんな方にぴったりの制度です。
毎回異なるアンバサダーにお話いただく本企画。今回の語り手は、東京で企業に勤める傍ら、海士町のレストラン『船渡来流亭』の企画運営に携わる錦織さん。
毎月、月の半分を海士町で過ごすという錦織さんに、町を通して出会った人々とのエピソードや海に囲まれた海士町ならではの楽しみ方について、お話しいただきました。
今回お話を聞いた人
錦織さん
島根県松江市出身、東京都在住。東京の企業で食のプロモーション事業に従事する傍ら、海士町内のレストラン『船渡来流亭』の企画運営に携わり、島留学生と共に港の「食」を盛り上げる。
島留学生と共に港の「食」を盛り上げる
── 錦織さんは現在、月の半分ほどを海士町で過ごされているそうですね。
錦織さん:
そうなんです。東京の企業から派遣されて、菱浦港フェリーターミナルにあるレストラン『船渡来流(せんとらる)亭』の企画運営に携わっています。
── レストランの企画運営とは、具体的にどんなことをしているのでしょう?
錦織さん:
船渡来流亭で提供するランチメニューの開発をはじめ、夜の営業時間帯の運営やレストランの空き時間を活用したコワーキングスペースの利用促進などを行っています。調理やホールなどの実務から、お客さん向けの宣伝告知やプロジェクトのディレクションを担うこともあります。
運営メンバーとして一緒に働くのは、『食を軸にした港の賑わい創出プロジェクト』に参加する大人の島留学生。みんなのリーダーとして日々の様子を気にかけたり、意見や提案をまとめたりするのも大切な仕事のひとつです。
環境は地方なのに、中身は地方じゃない。ガラリと変わった海士のイメージ
── 錦織さんは島根県のご出身とのことですが、海士町を訪れたことはありましたか?
錦織さん:
いえ、進学で上京するまで島根県松江市で暮らしていましたが、海士町に行ったことはないんです。隠岐の島に対して、当時は「おじいちゃんとおばあちゃんがたくさんいるところ」というイメージをぼんやりと抱いていた程度でした......(笑)。
── お仕事で海士町に深く関わるようになった今、そのイメージに変化はありましたか?
錦織さん:
それはもう! ガラリと変わりました。今は若者であふれていて、エネルギッシュなイメージ。「地方っぽくないな」と思います。
豊かな自然やその土地ならではの食材があるという環境においては”地方”だけど、そこにいる人たちのマインド、つまり中身は”地方ではない”というか。活気や賑わいがあるんです。
そんな風に感じるのは、島留学生の存在が大きいのかなと考えています。
仕事柄、島留学生と行動を共にする機会が多いのですが、近くで接していると、皆さんとにかく元気なんです。それも、どんちゃん騒ぎをするような元気という意味ではなく、やりたいことにまっすぐ、楽しみながら真剣に向き合う「芯のある元気」。
日頃から自分たちで何が課題なのか、どういうアプローチだったら解決できるかということを考え、実行に移す。「自分たち主導」であるからこその推進力はもちろん、ものすごい熱量を感じます。
── 「芯のある元気」ですか。良い言葉ですね。
錦織さん:
そんな島留学生たちの「元気」に、私も刺激を受けることが多くて。
海士町での仕事は、全体をまとめる統率力や、ゼロからプロジェクトを作り上げる推進力が求められたり、私にとってはチャレンジングな業務ばかり。そこへ果敢に立ち向かう勇気や簡単に諦めない粘り強さを島留学生の皆さんからもらっています。
ちなみに、みんな遊ぶときも全力なんです。中には「いつ寝てるんだろう」って不思議に思うくらい、仕事と遊びの予定を詰め込んでいる子もいて(笑)。その生き生きとした様子に引かれて、プライベート面でもたくさん影響を受けました。
島のみんなと。ひとりで。東京では味わえない、海士で過ごす贅沢な時間
── プライベートの海士町の過ごし方も気になります! 滞在中、仕事終わりや休日はどんなことをしているんですか?
錦織さん:
「仕事終わりに立ち寄る」と言えば『梅田バー』。『梅田亭』というシェアハウスで生活する大人の島留学生の有志が自主的に運営する飲み屋で、木曜夜のみ開くんです。普段から店主の子たちと仲良くさせてもらっていることもあり、よく足を運んでいます。
後は、仕事終わりにそのまま海へ泳ぎに行ったこともあります。日が沈むまで遊んで、子どもの頃に戻ったようにはしゃいで、とても楽しかったですね。仕事終わりに自然の中で思い切り体を動かして遊ぶなんて、東京ではなかなかできないこと。印象深い思い出です。
── 確かに、都会ではまず味わえない時間ですね。町民の方とも一緒に過ごすことはありますか?
錦織さん:
町民の方にも日々お世話になっています。島留学生に連れていってもらった釣りがきっかけで、地元のおじいちゃんと仲良くなりました。時々釣った魚を捌いて持ってきてくれるんです!
同年代で漁業を営む方とも知り合うことができ、持ってきてくれた魚で魚パーティーをしたり、一緒に釣りへ行ったこともあります。
── まさに島ならではの楽しみを味わっているんですね!
錦織さん:
そうですね。特に海士町は海に囲まれているので、釣りを楽しめる場所がとても多いんです。それに、アンバサダーには釣り道具一式を無料で貸し出してくれる特典があるので、初心者の私でも始めやすかったです。
アクティビティだけでなく、海士町の自然そのものの豊かさに癒されることも多いです。
あとは、時間を見つけて町内を散策する時つい立ち寄ってしまうのが『宇受賀命神社(うづかみことじんじゃ)』です。
田んぼの中、本殿へまっすぐのびた参道が印象的な神社で、佇まいがまるで映画『君の名は。』の世界観なんです。美しい景色はもちろん、澄んだ空気や神聖な雰囲気に触れ、身を置くだけで心が落ちつくのを感じます。
他にも、満天の星空にはいつも感動させられます。海士町は街灯が少なく夜は真っ暗で、星がくっきりときれいに見えることが多いんです。
仕事や会食の帰りに複数人で歩いているときなど、時々空を見上げてはお喋りをして、しばらくして歩き出す。夜風も気持ち良くて。「贅沢な時間だな......」と噛み締めながら歩いています。
「アンバサダー」という共通点がもたらした繋がり
── 最後に、アンバサダーとしての関わりについても伺わせてください。そもそもアンバサダーになったのには、何か理由があったのでしょうか?
錦織さん:
実は、ノリと勢いなんです……(笑)。海士町の方に初めてお会いしてからすぐ、アンバサダー制度を紹介していただいて。ふるさと納税を利用すれば地元でもある島根に貢献できるし、面白そうな取り組みだなと思い、好奇心だけでえいやっとアンバサダーになりました。
── 素晴らしい行動力ですね! そんな錦織さんがアンバサダーになって一番良かったと思うことは何ですか?
錦織さん:
他のアンバサダーの方々とより深いところで繋がれたことです。
同じ地域で仕事をする人同士が繋がることはよくあると思うのですが、「海士町アンバサダー」という共通点が加わることで、もう一歩距離が縮まる感覚があります。そこでは職業や経験値、組織での立場などは関係なくて。そんな環境だからこそ、アンバサダーの間で仲間意識のようなものが芽生えているのかもしれません。
社会人経験の浅い私でも経営者や他業種の方と楽しくお話しできて、自分の視野がぐんと広がるのを感じるんです。人生の先輩として、色々なことを学ばせていただいています。
これらすべて東京のオフィスで働いているだけではできなかったであろう経験。良い機会に恵まれたなと思います。
── アンバサダーの皆さんと充実した時間を過ごしているようですね。アンバサダー同士の交流の機会は度々あるのでしょうか?
錦織さん:
町内外で定期的にあります。私の場合は、アンバサダーコミュニティのつながりの中で何度か町内のスナックにみなさんで一緒に行く機会がありました。みんなでカラオケを楽しんだり、飲んだり。そこで桑原さんや赤沼さんともお会いしたんですよ。
アンバサダーの方とビアガーデンで飲みながら、釣りをしたこともあります(笑)。
東京でも定期的にアンバサダーの交流会やイベントが開かれていて、先日も日比谷で『超!海士町祭り』が開催されました。
ちなみに、私はそのお祭りに会社の社長と同期を連れていったんです。海士町内で人気の『アヅマ堂』が出展していたので「海士でも人気で美味しいんですよ!」と紹介したり、海士町の米作りを”人生ゲーム”で体感できるブースで、農家の1年を経験したり。ゲームでは4組対抗で2位になり、海士の『本氣米』をいただいたんです! ちなみに、本氣米は粒立ちもよく、本当に美味しいんです。
イベントを楽しみながらも、アンバサダーとしてしっかり広報活動をするいい時間でした。
── まさに「アンバサダー」としての活動ですね!
錦織さん:
いつも海士からもらってばかりなので、恩返ししたいと思って。
「海士町アンバサダー」って面白い制度ですよね。「海士を応援したい」という気持ちさえあれば関われる、地方との良い関係の築き方だなと思います。
それに、ただの関係人口ではなくて、海士町を広める「広報担当」という役割も担っている。こんな取り組みは他自治体ではなかなかないと思います。
何より私としては、アンバサダーになったことで自分の所属先がひとつ増えたような感覚があるんです。海士町を中心に楽しい時間を共にする仲間が出来たことは本当にありがたいですし、心強いです。
今後も海士町のために仕事に励み、プライベートでは思いきり遊んで、楽しみながら全力で海士町と関わっていきたいと思っています。