「暮らすこと」と「生きること」が近づいた3ヶ月。
JICAボランティア事業では、隊員の皆様の帰国後の活躍支援やボランティア経験の社会還元の促進にも取り組んでいます。その一環として、帰国後も日本国内の地域が抱える課題解決に取り組む意思を有するJICA海外協力隊合格者に対し、自治体等が実施する地域活性化、地方創生等の取組み「グローカルプログラム(派遣前型)」を開始しました。
海士町も10月から12月まで3名のグローカル生が着任し、地域で活動しています。今回はそんな3名を紹介したいと思います。
海士町に来てみてどうですか?
篠宮さん:
何もかもありふれて選び放題の都会では、余白がなく、常に「何か」に追われてる気がするんです。職場とか、家とか、友達といるときとか。都会では場面で自分を使い分けしている気がしていました。
生き物たちの音を聞きながらふらっと目的もなく歩いているのが心地よくて、ふと上を見ると空の移り変わり模様がほんとすごくて。ここ(海士町)は、日が出たら活動して、夜になれば家に帰る、自然と共に生きている感じがします。海士町では自然体でありのままで常に居られる気がします。島の外から見た印象では、ここは、社会課題にありふれた場所でした。
でも、実際暮らしてみると、いい意味で悲壮感が全くないというか。いつもみんな楽しそうで、「やらなきゃ」と必死さがあんまりないなと思います。
先週末に隣の西ノ島に行ってきたんですけど、夕方菱浦港が見えた時、なんかホッとして。2週間しか海士で過ごしてないですけど、地元に帰ってきた感じがしました笑
海士町ではどんなことをしているのですか?
北分地区で自然の中での場づくり
篠宮さん:
Iターンで来られた宮崎さんと、北分地区にある裏山を子供の遊び場にする活動です。近年、海士町近海でナマコが減少している現状を知った宮崎さんは、ナマコの資源量は回遊性の漁獲物に比べて採れる量の変動しないので、海士町周辺に自然に発生するナマコを増やせる仕組みづくりから取り組まれている方です。
お話を聞きに行った時、本当に目の前にある日々の暮らしを大事にされている方で、素敵だなと思いました。先日も島根県立大学の学生がお手伝いをしてくださり、手作りの簡易トイレを制作しました。宮崎さんと、与えられたことをするだけでなく、子供たちも自然のなかで、考えて何か生み出していく「場づくり」が一緒にできたらと思っています。今は小学校で竹ジャングルジム製作を行なっています。
知る人ぞ知る因屋城跡地の整備
篠宮さん:
2つ目は「因屋城跡」にスポットを当てた取り組みをスタートしました。隠岐といえば、島流しの島の地として知られ、その中でも後鳥羽上皇は有名ですよね。19年間を海士で過ごした後鳥羽上皇は、島の人にとっては「ごとばんさん」と呼ぶほど近しい存在だと知りました。
流刑でやってきた都人たちの影響もあってか、島には神楽や祭、島料理など、独自の文化が色濃く残っています。あまりお城があるイメージはないかもしれませんが、実は隠岐には山城跡や居館跡が残っており、その代表格が海士町にある因屋城なんです。
でもこれは、島内の方の間でも知る人ぞ知る場所になっていて、上手く活用できないものかと思ったのが活動のきっかけです。隠岐神社や村上家資料館のすぐそばにあるので、隠岐神社〜源福寺〜海難慰霊碑〜因屋城跡〜村上家資料館までを繋げる散策ルートを確立したいと思っています。
福井小学校で特別支援級のサポート
篠宮さん:
ずっと福祉の分野で生きてきて、自分のやりたいことやセネガルでの活動にすごく近いので選びました。小学校からサッカーをしていたんですが、当時大スターだったベッカム選手がユニセフの活動をしていたり、中田英寿選手が引退後にボール1つで世界を放浪するのをテレビで見て「カッケー。自分もそうなりたい!」と漠然とした憧れを抱いていました。
小学校の卒業文集にも「将来はサッカー選手になって引退したらボールを持って貧しい国に行きたい」と書いたのを覚えています。とにかくその頃からなぜかアフリカに行くんだ!と決めてましたね。今思えば、何をもって貧しいのか分からないですけど笑
福祉の分野を志したきっかけは、「国際協力と社会福祉はおんなじだ!」とテレビか何かで見たのがきっかけです。「人がより幸せになるよう人生を応援する仕事」が社会福祉だと思っていて、国籍や場所が違えば国際協力と呼んでいるなと思って。休み時間にはサッカーをしたり子供たちに向き合いながら、場所は違えど、ここ海士町で自分がこれまでやってきた経験を生かせる環境でできていることがすごく嬉しいです。
地域に入る中できをつけていることはありますか?
篠宮さん:
プロジェクトを進める中で、僕なり調べたりもするんですけど、やっぱり1番情報を持っているのは、地元の方達なので、「こういうのを考えていてやりたいんですけど、何も知らないので教えてください」というと嬉しそうに教えてくれたりするんです。
やっぱり、自分がやりたいも大事なんですけど、3ヶ月しかいないので、いかに地元の人を巻き込んで継続的な活動にしていくかにも繋がっていくとは思います。共感してもらいながら進めていくこを意識しながら活動しています。
最後に一言
篠宮さん:
福祉の隊員は実務経験が2年必要で早く行きたくて、うずうずしていましたが、こうして海士町に来られたのも自分に合う要請を粘り強く待ったおかげだと思っています。青年海外協力隊に応募を検討している方は、焦らずじっくり待ってみることをお勧めします!今は、とにかく、海士町での生活を楽しみたいです!海士のことは知らないことがたくさんあるので楽しそうなイベントや集まりがあればぜひ誘ってください!3ヶ月間よろしくお願いします!
落ち着いた雰囲気で話してくれた篠宮さん。海士町での3ヶ月間を経て、セネガルに羽ばたいて行ってほしいです!ありがとうございました!
文: 大人の島留学生 住岡尚紀
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過去のグローカル生の活動の様子はこちらです。