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住宅の柱がカウンターに!再利用から受け継がれる技術~新庁舎リメイク家具ストーリー~

2024年11月に新しくなった海士町役場。その空間を彩っているのがユニークな家具たち。海士町新庁舎魅力化プロジェクトのリメイク家具チームによって生まれ変わったリメイク家具にまつわるエピソードをご紹介します。


新庁舎のエントランス 

新しい役場の入り口から入ってすぐの所に設置されているU字カウンター。こちらはチェックインカウンターをイメージして作られたものになります。

開発段階のスケッチ

このカウンターにはスタッフが常設し、新しい役場に訪れた人が困らないよう、誰でも使いやすいようにご案内します。


木製の天板へのこだわり

こちらのテーブル、特質すべき点は木製の天板土壁の二つです。

2024年7月に開催したワークショップで天板部分は製作されました。こちらのワークショップは、海士町の匠会のみなさんにご協力いただき、町の大工さんやサッシ屋さんなど島の職人さんにご参加いただきました。

解体のときに出た柱を運搬する様子

まずは柱に打たれた釘を抜くところから始まりました。機械で切断する際に釘を切ってしまうと刃物が割れてしまうかもしれない。

ここで刃物が割れてしまったらこれ以上の製作が続けられないということで、半日ほどかけて慎重に釘を抜いていきました。

そのあとは木材を並べてデザインを決めるのですが、あまり揃いすぎても不自然、バラバラすぎても変。ということで、木材の面や、向きなどをいろいろ変えながらデザインを吟味して製作しました。

また、木材というものは外側の部分が年数が経つにつれ黒くなっていくのですが、切断すると切り口の部分には汚れていない綺麗な面が出てきます。

綺麗な面を出しながらも、住宅を長い間支えてきた柱の重厚感を残したい。
そこで古材の全てを一度バーナーで炙り、全体を濃い色の塗料で塗りました。

また、柱と梁には接続するための大小の穴が空いています。その穴にコンセントのコードなどを配線できるように空けたままにした設計にしました。

土壁で繋ぐ職人の技術

テーブルの下部は、現代の建築ではあまり使われることのない土壁で塗られています。こちらの土壁も解体したときに出た土を利用しています。

この土の面白いところは、「水」と「すさ」という藁の細かいものを
混ぜて作られたものですが、また水を混ぜてしっかり練り上げると粘土のようになって再利用が可能という点。

町で使われた土を使うこだわりを持って、試行錯誤を重ねて検証。島で左官屋を営む上野さんが制作に携わりました。

左官屋とは?
建設現場において「鏝(コテ)」とよばれる道具を用いて壁や床の下地、または仕上げなどを担う職人のことを指します。

昔は土壁を使った建築が町内でも多く行われていましたが、最近はボードの上にクロス(壁紙)を貼る建築方法が主流となり、息子さんは土壁を塗る機会がありませんでした。そこで今回、お父さんは土壁の土作り、息子さんは初めての土壁での塗りを担当しました。

住宅でわざわざ土壁を塗るというのがとてもコストのかかるもので、お金も、時間もかかるという理由から時代と共に失われつつある技術ではありますが、コストをかけた分だけより頑丈に、対応年数も長くなるということで土壁の塗りを今回のテーブルに採用しました。


リメイクを通して受け継がれる技術

また、こちらのテーブルとセットで置いてある椅子も開発センターの椅子を再利用して、肘置きをきれいにリメイクしました。

昔のものが今のものへ、昔の技術が今の技術に。
受け継がれていく思いがこのテーブルに込められています。


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