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人と自然が共存したまちづくり。島の産業廃棄物から生まれた壁画アート~新庁舎リメイク家具ストーリー~
2024年11月に新しくなった海士町役場。その空間を彩っているのがユニークな家具たち。海士町新庁舎魅力化プロジェクトのリメイク家具チームによって生まれ変わったリメイク家具にまつわるエピソードをご紹介します。
今回は島の産業廃棄物を活かしてリメイクされた壁画アートのストーリーをご紹介します。
海士町の資源を生かした、壁画アート。
新しい役場の壁にはおしゃれな壁画アートが2つあります。
「島の中の、ゴミになってしまうものをうまく使えないか」
新庁舎魅力化プロジェクトのリメイク家具チームに相談したところ、島の資源がおしゃれなアートとして生まれ変わりました。
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暮らしの豊かさを担う山と食の恵み。
山から流れ出る、良質な湧き水は海士町の産業を担う「農業」には必要不可欠。山や森を守ることで海も守られます。
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そんな、人と自然が共存する里山がこちらの壁画アートに込められました。
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使われている木材は、解体した家の古い柱や梁といった古材を使用しています。
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古材の周りに敷き詰められているのは藁です。海士町西区 村越さんの工場に眠っていた藁を大量にいただきました。
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1つ1つ束ねて、丸2日。
包丁でひたすらカットしてつくられました。
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古材や藁といった島の資源をいかして、海士町の「山」と、「食の恵み」が表現された壁画アート。なんだか、海士町の街並みにも見えてくる作品です。
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海士町の特産品である岩牡蠣。
ふるさと納税の返礼品や、観光客が楽しむなど、いろんな人に食べてもらっている岩牡蠣。島の自然を活かして育つ岩牡蠣は、島の自然と私たちの生活をつなぐ象徴です。
一方で、岩牡蠣の殻は、産業廃棄物として非常にたくさん積み上がっているというのが1つの課題としてありました。
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こちらの作品は、約350個分の牡蠣殻が使用されています。
海士町で岩牡蛎を取り扱う事業所から集められました。
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牡蠣には、牡蠣殻の隙間に汚れを溜めて水を浄化する力があるといいます。それになぞらえて、海士町の美しい里海が壁画アートとして表現されました。
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島にとって、里山里海とは。
海士町の暮らしの中にも、山があり、海があり、里があり、その中に人間の営みがあります。
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「地域」=「人」を表すことが多いですが、海の恵みをいただいたり、旬の野菜を食べたり。虫も花も草木も魚もすべてをまとめて大切な「地域」です。
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「里山里海を忘れないまちづくりが、今後も続いてほしい。」
里山や里海を想起させるようなものを新しい役場におきたいという想いから2つの壁画アートの制作が進められました。
壁画アートを制作したリメイク家具チームの平下悟子さんからコメントをいただきました。
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「里山アート」~人のいとなみ×豊かな山~
海士町民家の解体現場よりレスキューした柱材は山の資源や人の暮らしをイメージさせます。広い田んぼが続く山のふもとでは、日本人の生活文化に深く結びつく米 = 藁(わら)があります。里山が存在することで、人の『住・食』を支え、人の暮らしをつくります。豊かな自然の恵みと人との繋がりをこの里山に表現しました。
「里海アート」~人のいとなみ×美しい海~
美しい海の中には人のいとなみを支えてくれているたくさんの生き物が存在します。その生き物たちが、海を綺麗にし、人が漁業をし、そこに暮らします。その暮らしので、人と密接な関係にある牡蠣。食の恵みをつくり、水質を浄化し、人のいとなみをつくります。牡蠣を主役に、大切に守り続けたい海士町の里海を表現しました。
海士町の資源をいかして、里山里海を表現した2つの壁画アートは、カルデラを彷彿させる海士町の地形にみえたり、キラキラと光る海にみえたり、水平線にみえたりもします。
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何にみえるか、どんな印象を与えるのかは、人それぞれ。
各々の視点で、新しい役場のアートを楽しんでくださいね。